第51章 The DiamondDust Rebellion
一瞬男の姿が脳裏をよぎったが、まさか、とすぐにそれを消し去る
苦しそうな返答
一体誰と……?
「あ、ちょっ……、……さん!」
どうやら一方的に切られたらしい
数秒の沈黙の後、紫苑のため息が漏れる
喜助はなるべく紫苑を驚かさないように、襖の木枠の部分をコンコンと叩いた
「!喜助さん!」
パッと振り返った紫苑は、目を大きく見開いていた
「冷えるから、中に入ったらどうっスか?」
わざわざ羽織を着て寒空の下、白い息を吐きながら全くこの子は何をしてるんだか…
「うん」
喜助に言われた通り立ち上がり中に入ると、名残惜しそうに一度振り返って空を眺めた
「どうしました?」
行灯に手をかけながら喜助は声をかけた
「月が……綺麗だったから」
「あぁ、本当っスね」
喜助はもう少し厚手の羽織を紫苑にかけながら、夜空の月を見上げた
「琴乃の斬魄刀、月の力だったなぁって…」
「そっスねぇ」
少しだけ月を眺めた紫苑は、喜助がつけてくれた炬燵に足をいれた
「それで、誰と話してたんです?」
あたたかいお茶の入った湯飲みで両手をあたためて、喜助に細い視線を送る
「マユリさんと」
「え、涅サンっスか?」
想像していなかった相手に、喜助は面食らった
「あの人昼夜関係ないから…」
研究の為なら昼夜問わずに動けるところは、人体改造の賜物だろうか
それとも只、単にマッドサイエンティストなだけだろうか…
あの人眠ったりするのかな…
「まぁ、それは分かりますケド…」
「琴乃を捕まえて連れてこいって」
途端に声を低くして、ずっと気になっていたことをさらっと言った紫苑は、湯飲みの中の水面を見つめていた
「どうやって生き返ったのか、興味がある…隊長命令だって…」
「あの人は、相変わらずっスね…」
「喜助さん、私…どうすれば良い?」
自分に助けを求める紫苑の瞳は、不安と戸惑いと迷いに揺れていた
「琴乃を捕まえたら…あの子、処刑されちゃう?…もう、傷つけたくないのに」
喜助の袖を掴む手は、小さく震えていた
「紫苑は、どうしたいんスか?…」