第51章 The DiamondDust Rebellion
一方冬獅郎は赤い髪をした、女の炎の攻撃と対峙していた
「何者だ!」
刀を合わせると、氷輪丸の氷が赤い髪の女の刀を浸食していく
それに一瞬驚いた女は後方に飛び去り、冬獅郎はそれを追う
「待て!」
女を探し、周囲を警戒していると強い霊圧を感じた
そして次の瞬間、冬獅郎は腹部を刀で貫かれていた
後ろに飛んだ冬獅郎の前に現れたのは、死覇装の上に外套を羽織り、顔を仮面で隠した男だった
「誰だ…お前は」
男は刀を抜き、冬獅郎に斬りかかる
死覇装を着た女の攻撃をかわし、隊員たちの元へ来た乱菊
「王印は?」
「分かりません!」
その乱菊の目に、敵と対峙する冬獅郎の姿が目に映る
「懐かしいなぁ!」
「顔を見せろ!」
仮面を取ろうとした冬獅郎をかわして逃げる敵
顔は見れなかったが、知った霊圧、聞き覚えのある声、何度も合わせたことのある刀の感触
そんなはずはないのに…
冬獅郎の頭には、一人の死神の姿が浮かんでいた
「待て!」
「隊長!」
冬獅郎は乱菊に少しだけ振り返ると、申し訳なさそうに目を細める
その時乱菊に再び死覇装の女が斬りかかる
「隊長!」
その刀を受け止めた乱菊は、立ち去る冬獅郎に声を上げた
女の重い斬撃に乱菊は顔を歪める
「くっ…灰猫!」
逃亡した敵を追うように青い髪の女と、赤い髪の女が先程まで冬獅郎が立っていたところに一瞬降り立つ
「参りましょう、琴乃様」
琴乃?
聞いたことない名前…
その声を合図に琴乃と呼ばれた女は乱菊の元を離れ、冬獅郎が去ったほうへと姿を消した
「王印がっ」
「延焼を食い止めろ」
隊員の一人が乱菊の傍に膝をつく
「松本副隊長!申し訳ありません!取り逃がしました!負傷者多数…副隊長?」
乱菊は冬獅郎が去ったほうを見つめていた
…─
「喜助さん…」
紫苑の霊圧探知能力は、そこまで高いわけじゃない
だから、黙っておこうと思った
昨日感じた僅かな霊圧が、ここ数日紫苑を悩ませている原因の、彼女のものだというなら…
どんな形であれ、きっと紫苑は苦しんでしまう
もしかしたら思い違いかもしれない
これ以上紫苑の苦しむ姿を見たくなかった