第50章 そういうのって、どういうの?
そう言おうとした時、唇を塞がれた
驚いて目をパチパチとしていると、ちょっと怒ったような表情の喜助さんがいた
「先に言わないでくださいよ」
「へ?」
「そういうのは男が言うもんなんスよ」
急に心臓が大きく脈を打ち始める
「そ、そういうのって…」
「でもいーんスか?こんな煤だらけで」
「それは…嫌、かも」
「そっスよね」
ん?何が?
「あの、いーんスかって……なに…が?」
「…さぁ、なんでしょう」
喜助さんはにっこりと笑いながら、問い詰める私を上手くかわしていた
そして、私の腕を包帯で厚めに巻いて、ラップをしてシャワーを浴びてきな、と言って割れた試験管を片付け始めた
脱衣所に入ると、今だ落ち着かない心臓に手を当てる
ちょっと考えてみたら、話の流れからして…
まさかそんな…
ドキドキがとまらない…
どうしよう
喜助さんの顔見れないかもしれない
それからなんだか緊張しちゃって、ドキドキしちゃって、喜助さんの顔を見ると顔が熱くなって、まともに話せない…
「なんじゃ、紫苑と喧嘩でもしたのか?」
余所余所しい紫苑を見て夜一は喜助に話しかけた
「違いますよー。照れてるんスよ」
「照れてる?」
「なんか付き合いたての頃みたいで、かーわいーっスね」
ニヤニヤしながら紫苑が去ったほうを見つめる喜助
「あ、聞きたいっスか?紫苑が照れてる理由」
先程より更に気持ち悪い顔になったため、夜一は話を聞くのをやめた
「…そのうちな」
「えー聞いてくださいよー」
「後での」
「夜一サーン!」
「鬱陶しいぞ喜助」
そんなやりとりを紫苑は知る術もなかった
その日の夜、紫苑が眠ったあと、ボクは100年前渡せなかったソレを見つめていた
いつ渡そうか
どうやって渡そうか
考えても考えても思い付かなくてなかなか渡せずにいた
こんなことになるなら、早く、渡しておけばよかった