第50章 そういうのって、どういうの?
喜助は紫苑の顎をなぞるように触ると、くいっと持ち上げ、触れるだけの優しいキスをした
「もっと…」
「おねだりなんて珍しいっスね」
それに応えるように、少しずつ少しずつ深くなる口づけ
「ん……ぁ」
愛しくて愛しくて堪らない
紫苑のすべてが欲しい
その体も、心も
いっそひとつになってしまえたら
両手の指を絡めて床に縫い付ける
首筋には紅い痕
耳に舌を這わせると震える体
「ゃ……ぁっ」
心臓が音をたてる
鎖骨に唇を寄せて、膨らみに沿って滑らせる
その頂を咥えようとした時…
『すみませーん』
2人の目がパチパチと音をたてた
咄嗟に時計を見ると、開店時間を5分程過ぎていた
「はーい、只今!」
慌ただしく身なりを整えた喜助が、左手で紫苑の頭を支えて
「続きはまた後でね」
そう囁かれた耳が熱い
慌てて店先に出る喜助さんを眺めながら、はだけた着物をなおす
はー朝からドキドキした…
喜助さんの食べ終わっていた食器を片付け、自分は何か簡単な朝食を探す
それからお客さんがチラホラ来てるのか、喜助さんが戻ってくる様子はなかった
自分の朝食を食べ終えた頃、小さな小包が届いた
私宛てだ…
送り主は阿近だった
仕事に関することだろう…容易に想像できた
小包を開けるとそこには怪しげな液体、如何わしい粉末…まるで危ない薬なんじゃないかと思ってしまった
一枚の指示書を広げると、専門用語、チンプンカンプンな記号、下手くそな解説図…
多分阿近の手書きだろうな
有難いけどもうちょっと上手な人居なかったのかな…
でも私のために書いてくれたんだよね
紫苑が頭を抱えていると、その背中にのし掛かるように喜助が体重を乗せてきた
「喜助さん、お客さん切れたの?」
「ははーん。これはボクにやらせる前提で送ってきてますね」
「そうなの?でも喜助さん研究で忙しくなるし、なんとか頑張るよ」
「なぁに強がっちゃってるんスか。こんなの朝飯前っスよ。さ、習うより慣れろっス」
店のレジに呼び鈴を置いて、私は喜助さんの研究室に連れてかれた