第50章 そういうのって、どういうの?
「はぁ~あったまるね…」
「全くあんな寒空の下…風邪引いても知りませんよ?」
「私が風邪引いたら、喜助さんがほっとくわけないじゃん」
「うっ…」
クスクスと笑う私の頬をさっきみたいに包み込んで、まだ芯が冷えてる肌をもう一度あたためてくれる
温かい湯飲みを包んでいた手で、さっきよりも凄くあたたかい
「でも、嬉しかったっスよ」
顔を少し上に向かせられ、細めた両目に見つめられて心臓が跳ねる
「…良かった」
唇を塞がれる
まるで喜助さんの愛が流れ込んでくるみたいに、あたたかいものが流れ込んでくる
「疲れたでしょう。明日話聞かせてくださいね」
「喜助さんもね」
「そろそろ寝ましょうか」
喜助は立ち上がり、寝室に向かう前に手洗いに向かう
紫苑はおかわりをして、まだたっぷり残っているお茶を早めに口に運ぶ
「あつっ」
飲み干すのを諦め、チロチロとお茶を啜る
別に猫舌なわけじゃないけど、さすがにあつくてやっぱりチロチロするのもやめた
左腕を枕がわりに卓袱台に投げ出す
空いた右手で湯飲みを触ってあたたかさを感じる
もう24時半っスか…
ずっと、起きて待っててくれたんスね
あんなに寒いのに、ボクの羽織一枚拾って…
ほんと、困った子だ
そういう喜助の頬は緩んでいた
少しだけ冷たいものが飲みたくて、冷蔵庫を開けると綺麗にラップされた1人分の食事があった
少しの罪悪感
ごめん、明日食べるね
それを伝えようと居間に戻ると
「紫苑…ごはん……」
そこには卓袱台に突っ伏している紫苑の寝顔があった
なんだか思わず少しの笑みが溢れる
「風邪引きますよ…」
小さな声で囁きかけると、喜助は紫苑を抱き上げて寝床に連れていった
もう既に深い夢の中の紫苑は静かに胸を上下させている
紫苑の体をあたためるように抱き締め、自身も眠りについた