第49章 なんだ、それでいじけてんのか
「驚きましたね…」
紫苑の呼吸器官の写真を前に、卯ノ花と勇音は目を丸くする
「医療従事者としては物凄く興味があるんですけど…」
と、おねだりをするように紫苑の目を見つめる勇音
「ごめんなさい。絶対秘密なんだって」
「ですよねぇ」
分かりやすく肩を落とす勇音
卯ノ花はさっきとかわって、心からの笑顔を紫苑に向ける
「良かったですね。西園寺さん」
「……はい!」
その返事に私も心からの笑顔で返した
「やっぱり貴女を退院させて正解でしたね」
「はい?」
「本当は退院させるにはちょっと早かったんですよ」
なんか、昔も同じようなことを言われた気がする
そう、あれは確か琴乃の時…
「貴女はやはり、あの方の傍に居るべきなのでしょうね」
卯ノ花隊長の優しい笑みに、照れ笑いをした
四番隊での検査を終えると私は十二番隊へ向かった
「阿近、お疲れ様」
阿近は研究室の扉を出た中庭のような場所で煙管を咥えていた
「ん、あぁ紫苑か…あ、悪ぃ!」
咄嗟に煙管を片付けようとした彼は、すぐにその手を止め、紫苑を見つめた
「大丈夫…なのか?」
私の喘息を心配してくれたのだろう
以前の私は煙なんて以ての外だったから
「大丈夫みたい」
と言っても彼は結局煙管を片付けてしまったけど
「やっぱり凄いなあの人は」
「阿近だって凄いよ。マユリさんの右腕だもんね」
「俺は浦原さんや、隊長の足元にも及ばねぇよ」
そんなことないと思うけどな
もし仮に今、マユリさんが居なくなるようなことがあれば、後任は間違いなく彼だろう
「隊長なら今居ないぜ…って、別に報告も何もねぇか」
「うん。お礼を言いに来たの」
「礼?誰に」
「阿近だよ」
心底、はぁ?という顔をして私を見る
「私の為に、しばらく仕事送らないでくれてるって聞いたから」
「別に、こっちの仕事が忙しくてそっちまで手が回らねぇだけだよ」
「優しいんだね」
「うるせぇよ」
あ、ちょっと照れてる
「早く帰らねぇとまたあの人迎え来るぞ」
「今日は遅くなると思うから」
「あぁ黒崎一護の件か…」