第49章 なんだ、それでいじけてんのか
「織姫さん」
そこに四番隊隊長の卯ノ花烈が笑顔を携えてやってくる
私にはその意味がすぐにわかった
「黒崎一護さんが、目覚めそうだと連絡がありました」
「本当ですか!?」
その時の彼女の顔は、雪姫に言わせれば、喜助さんが迎えに来たと伝えた時の私の顔そっくりだったらしい
「四番隊の穿界門をお使いなさい。すぐに現世へ向かえるよう指示しておきました」
「ありがとうございます!」
織姫はしっかりと頭を下げると、紫苑に向き直った
「あの私、浦原商店にたまに行くので、今度ゆっくりお話ししてください!」
「もちろん」
織姫は紫苑と勇音にも頭を下げると、くるりと背を向け、駆け出した
「織姫さん」
数メートル走ったところで卯ノ花に名前を呼ばれた織姫は、つんのめるようにして立ち止まり、振り向く
「はい?」
「しばらくは現世でゆっくり休養なさい。こちらの手伝いは、もう結構です」
「え…?でも……」
「貴女の能力は大変に強力なもの。それ程の力であれば、当然、術者への負担も大きいはず…。体を休めることも修練のうちです。救護が滞れば、組織は立ちゆかなくなるのですから、それを忘れてはなりませんよ」
卯ノ花はゆっくりと織姫に歩み寄り、その肩に優しく手を置いた
「本当に…よく働いてくれましたね」
その肩をいたわるように撫でさする
「ありがとうございます…!」
織姫は目に涙をいっぱいためてほほ笑んだ
あぁやっぱり良い子なんだ…
心のどこかですっごい嫌な娘であってほしい…なんてちょっと思っていたことは秘密
卯ノ花隊長から伝令神機を受け取った彼女は、四番隊の穿界門を使って現世へと戻った
その姿を見えなくなるまで見つめていた卯ノ花がゆっくりと振り向き、私に素敵な笑顔を見せた
「西園寺さん、時間は守って下さいね」
あぁ目が笑ってない
井上さんを見るのに夢中になって遅刻したなんて、言えない
「紫苑さん、井上さんに牽制しなくても大丈夫ですよ」
「…バレてた?」
そして検査を一通り受けた
「凄い…本当に喘息が治ってる…」
炎症を起こしていた呼吸器官が、まるで別物のように綺麗になっているらしい