第49章 なんだ、それでいじけてんのか
なあんて話が聞こえちゃったもんだから、ちょっとジェラシー感じちゃったりして
やっぱり話しかけるのやめようかな…
「何してるんですか?紫苑さん」
入口すぐの壁に背中を預けて井上織姫を見ていた
検査の時間になっても来ない紫苑を心配して、副隊長の勇音が探しに来たらしい
「敵情視察…」
「はい?それより検査やりますから…」
「ねぇ、どうやったら勇音さんやあの子みたいに胸もっと大きくなるの?」
「何言ってるんですか。紫苑さん充分大きいじゃないですか」
そうかなぁ…と自分の胸を見ると、勇音さんやあの子にはやっぱり負ける
「男の人はやっぱり巨乳好きなのかな…」
「…浦原さんと何かあったんですか?」
「別に…」
ボーッとしてたらふいに、視界に栗色の差し色が入り込む
パッと顔をあげると、そこには彼女がいた
「あ、あの、もしかして西園寺紫苑さんですか?」
ついさっきまでは、彼女に会ったら話しかけようなんて思っていたけど、あの会話を思い出してちょっと躊躇していた矢先のことだった
彼女から声をかけられた
「初めまして。井上織姫さん」
私の出来る限り最大の笑顔で対応した
勇音さんは私のそんな笑顔を見抜いてか、隣で若干引いている
「わぁ…!すっごい美人さん!私の事知ってくれていたんですね!」
目をキラキラさせて、子犬みたいに両手を合わせてくる姿を見ると、確かに可愛い…
「浦原さんから、西園寺さんの話を聞いたことがあって、話してみたいなぁってずっと思ってたんです。西園寺さんが入院中に話しかけようと思ったんですけど、なんか緊張しちゃって…」
「私も井上さんと話してみたいと思っていたの。喜助さんから聞いていたから」
喜助さんと呼ぶところで若干声音を強めたのは、きっと勇音さんも気づいていないだろう
「わぁーやっぱり付き合ってるんですね!浦原さん、すっごく美人で、可愛くて、料理上手で、胸が大きくて、すっごく綺麗な髪で、優しくて、頑張り屋で素敵な彼女さんが居るって言ってたから、どんな人かなぁって」
「喜助さんがそんなことを…」
どうしよう…素直に嬉しい…
「ベタ惚れですねぇ浦原さん」
勇音さんが隣でニヤニヤしてるのも気にならないくらい嬉しい…