第48章 なんだこの可愛い生き物は
でもまぁ紫苑はお化け屋敷のお化けを魂魄だと思っているし、死神にとってはそういう存在は極身近なものだから、お化け屋敷デートでありがちな怖がって密着するなんていう、ラブラブドキドキハプニングは起きなさそうっス……ね……?
「紫苑?」
ふと違和感を感じて彼女を見ると、いつもは手を握ってる彼女が今日に限ってガッチリと腕を組んできている
「もしかして怖いの?」
その言葉に紫苑の体がビクッと反応する
「こ、怖くないもん…」
館の窓がカタカタカタと音を鳴らして開いたり閉じたりを繰り返す
コウモリがバサバサっと飛び立つ
館の住人らしき人影が、ボクたちの前に姿を現しふらーっと消える
その数秒後、照明が赤くなり女の人の叫び声が耳に刺さる
「きゃあぁぁっ!」
更にキツく腕にしがみついてくる紫苑
体をカタカタと震わせて、暗がりでよく見えないがおそらく半泣きしているだろう
「大丈夫、もうすぐ終わるよ」
デートスポットになる理由がわかるっスね
ちゃっかり胸まで当たってるし、最高っス…
そして出口を出ると、ほんのり生ぬるい空気が肌に染み付く
隣の紫苑は未だボクの腕を掴んで離さない
「やっぱり泣いてた」
「だって怖かった…」
「強がってたくせに可愛いんスから。さ、何か食べますか?」
「うん!」
途端に表情を明るくして、紫苑の頭の中からもうお化け屋敷は抜け落ちているだろう
2人で分けあったポップコーン
2人で乗ったボート
絶叫マシン
巨大迷路
遊園地とはこんなに楽しいものなのか
以前、雨とジン太を連れてテッサイと来たことがあるけど、一緒に居る人が違うとこうも違うものか
ふと、紫苑の異変に気づく
さっきまで笑顔で話していたのに、ボクから視線を外した時に表情が少しだけ曇る
しばらく観察していると、あることに気づいた
「紫苑、観覧車に乗ろうか」
「うん!」
さっきまで陰っていた表情が途端に笑顔になる
次第に上がっていくゴンドラ
小さくなる人影に紫苑は目を輝かせている
「疲れた?」
その言葉に一瞬紫苑が固まる
そしてゆっくり喜助のほうを見る