第48章 なんだこの可愛い生き物は
カァァッと紫苑の顔が赤く染まる
「邪魔しないでくださいよ夜一サン、今いいところなんスから。さ、紫苑、続き続き」
「で、できるわけないじゃない!もう!ほら遊園地行こう!」
「えーお預けっスか?生殺しっスよぉ…」
「気をつけてのぅー」
呆れたような目で見る夜一サンを尻目に、紫苑に引っ張られ浦原商店をでた
遊園地までの道のりであることに気がついた
野郎共の目が気に食わない…
紫苑がこんなに可愛いのが悪い…
喜助さんを引っ張ってお店を出た
そしてあることに気がついた
すれ違う女の子たちが話している声が聞こえる
『ねぇあの男の人凄くかっこいい』
『モデルさんみたい!』
私の喜助さんなのに…
これ見よがしに手を繋いだその時、喜助さんも同じように手を繋いできてくれた
「さ、着きましたよ」
「わぁ……」
目の前には見たこともない景色が広がっていた
紫苑の心は高揚していた
「喜助さん!喜助さん!」
「はいな」
初めて見る遊園地のアトラクションの数々に紫苑は目を輝かせている
目に止まったものから好奇心の向くままに真っ直ぐに
振り回されている感じがこの上なくたまらない
以前、まだ大正の現世に行った時もこんな風に振り回された
それをまた見れるなんて、胸が熱くなって、幸せを感じずにはいられなかった
「喜助さん、ここなぁに?」
紫苑が指差したのはおどろおどろしい空気が漂う"恐怖の館"
ここのお化け屋敷は本格的で、雑誌にも何度か取り上げられたことがあるほどだ
「お化け屋敷っスよ」
「お化け屋敷…お化けってことは魂魄…?なら平気!入ろう」
「ここにいるのは魂魄ってわけじゃ、ないんスけどね…って紫苑」
気づくと彼女はもうお化け屋敷の列に並んでいた
「喜助さんもうすぐだよ!」
館の中に入ると途端にひんやりした空気が頬を撫でる
不気味な音楽と先に入ったであろう人たちの悲鳴が遠くから聞こえる