第47章 胸が張り裂けそうだよ
関係の浅い私でもわかる
乱菊さんが、ギンに抱いていた想い
「好き、だったんだね」
乱菊はサラダに伸ばしたフォークを止めた
「そうね、いつも何考えてるか分からない奴だったけど…いつも行き先を告げずに居なくなっちゃうような奴だったけど…そんなアイツが好きだったんだわ」
乱菊の切ない表情が、100年前のギンと重なる
「ねぇ、ギンって乱菊さんの他に金髪の女の子の仲良い子いる?小さい頃からの」
乱菊が目を少し見開いて、え?という顔をした
「…聞いたことないわね」
「そっか、じゃあ…」
きっと気持ちを伝えられずに、逝ってしまったんだろう
2人の想いが、今、私の中で交わることに、胸が苦しくなって…気づいたら涙が流れていた
「ちょ、どうしたの?なんで泣いてんのよ~」
乱菊はさっとハンカチを取り出すと、紫苑の頬に添えた
紫苑はありがとう、と言いながら呼吸を整える
「ごめん…もう大丈夫」
ねぇ、ギン
乱菊さんが、その大切な子なんだよね
幼いながらに自分の全てだと言った、大好きな子なんだよね
私が代わりに、伝えてもいいかな?
「昔ね、ギンが言ってたの。大切な子がいる、その子が泣かないで済むようにしたくて護廷に入ったって」
そう、ギンはそう言って私の元を去って、死神になった
「うん」
ギンが、私に想いを預けていてくれて、良かった
「色々終わったら、その子に伝えたいことがあるって」
乱菊の目が更に開く
あぁ、やっぱりギンは想いを伝えられなかったんだ
悔しかったよね
私でさえ、胸が張り裂けそうだよ
「本当はギンに口止めされてたんだけどね」
「うん」
「ホンマはずっと好きやった。ずっとボクの隣に居ってほしい」
乱菊の手からフォークが落ちる
カン─と高い音が鳴る
「なによそれ…」
乱菊の肩が小刻みに震えている
「そういうことは、ちゃんと自分の口で言いなさいよ…いつも…大事なことは何も言わないんだからっ」
私が持っていたハンカチを、今度は乱菊さんに差し出す
「ありがとう…ありがとうっ紫苑っ」
乱菊の手をそっと優しく包んだ
ギンにも、乱菊の想いが伝わってるといいな
…大きくなったギンと話したかったな