第46章 隊長やあらへんで
「見に行くのはいいっスけど、寒くて入れないっスよ?」
「あ、そっか…じゃあ見るだけ」
「じゃあ前半は遊園地でも行きますか」
「ゆーえんちってなぁに?」
「楽しいトコロですよ」
紫苑はまるでスキップしそうなくらい、ウキウキと心を踊らせた
…─
お風呂から上がって居間に戻ると、珍しく紫苑が、テレビに集中していた
こっちに来てすぐは、物珍しくなめ回すように見ていたけど、さすがにそれも落ち着いてきたし、面白い番組でもやっているんだろうか
しばらくその姿を見つめていると、ボクに気づいた紫苑が此方を見た
「喜助さん!」
「はい?」
「遊園地行く日いつだっけ?」
「水曜日っスよ」
するともう一度テレビを見つめて
「お天気お姉さんが晴れだって!」
…なるほど
天気予報を見ていたんスね
晴れと知って、ぱっと笑顔になるのがなんとも可愛いというか、こっちに来てからの紫苑は初めて見るものばかりで、なんだか少し子供みたいで、そこもまた可愛いなぁと
「そんなに楽しみなんスか?」
「うん!」
あぁ可愛い
このまま天気予報が変わらないといいんスけど
…─
「雨っスね…」
遊園地当日の朝
お天気お姉さんは嘘をついた
「雨じゃないよ、豪雨だよ。なにこれ」
風も強く、打ち付ける雨が古い商店に響く
「やだぁ…」
「仕方ないっスよ」
今にも泣きそうなウルウルっとした瞳
「今日は諦めて、お家でのんびりしましょ」
「喜助さんと遊園地デートしたかった…」
口をへの字に曲げて、ついに目尻から涙が伝う
「…いいもん、今日は喜助さんとずっとくっついてるから」
「偶然っスね。ボクも今同じこと考えてました」
微笑みあう2人の間には、こそっと繋がれた手があった
紫苑とのデートは次のお店の定休日に決まった
…─
「鉄裁さん、お願いがあるんですけど…」
「む、どうされましたかな、紫苑殿」
洗い物していた手を止めて、鉄裁は紫苑に向き合う