第45章 一緒に行こう
現世に来て一週間がたった
喘息症状は本当に出なくて、私は生まれてから初めて、あの息苦しさから解放された
100年前に見た現世とまるで変わっていて、文明の発展に驚いた
十二番隊からの任務は一向に来る気配がなく、遊びに来た乱菊さんから、阿近が気を使ってくれているらしいことを聞いた
鉄裁さんとも再会した
ジン太くんと雨ちゃんを見たときは喜助さんの子供じゃないかって思ったけど、すぐに否定された
そして一週間ここに居て、気づいたことがある
「これ、金平糖……」
昔、まだ付き合う前に喜助さんがお土産に買ってきてくれたもの
入れ物は変わっているけど中身は間違いなく、紫苑の好きだったそれだ
アイスのケースには見覚えのあるアイスがおいてある
飲み物の棚には喜助さんがお土産に買ってきてくれた、タイムティーが置いてある
庭先の鉢植えには紅姫と雪姫の薔薇の苗木が、枯れている…
紫苑は枯れた薔薇を見て、微笑みながら涙ぐんだ
「この店は喜助の、紫苑への愛に満ちているぞ。かゆくなるくらいにな」
「夜一さん…」
「その薔薇はなんとかしてやれ。植物を育てる才は皆無のようじゃからの」
「私…100年もちゃんと愛されていたんですね」
紫苑は薔薇をそっと触る
「正直不安だったんです。100年間本当に独り身だったのかなって。私を忘れて、違う大切な人が居るんじゃないかって」
「安心して良いぞ。儂の知る限りでは喜助は、お主以外に目もくれなかったぞ。まぁ言い寄られることは度々あったがの」
「へぇ」
「どんな断り方をしたかは知らんが、水をかけられていたこともあったぞ」
夜一はクスクスと思いだし笑いする
「喜助さんが?」
紫苑もつられてクスクス笑う
「なーに話してるんスか?」
そこに嫌な予感を感じた喜助が顔を出す
「いかんいかん。紫苑、今の話しは内緒じゃ」
「あーそうやってアタシの悪口言ってー」
拗ねる喜助を横目に夜一は瞬歩でその場を去る
「喜助さん、お花買いにいこう」
「あー、薔薇っスか?スイマセン、それ3本目なんスよ…」
「このままじゃ雪姫と紅姫が怒っちゃうからね」
そして庭先には新しい薔薇の苗が置かれた