第45章 一緒に行こう
「これで、治ってるの?」
喜助は頷いて、それから説明し始めた
「ボクの卍解は、範囲内の触れたモノを作り替える能力っス」
「作り替える…それって、まさか」
「紫苑の、肺、気道……呼吸器官を作り替えました」
「なにそれ…」
想像もしていなかった方法に紫苑は驚きを隠せない
「だけど100年前、ボクの卍解の能力はまだ一時的なもので、卍解を解くと、その時作り替えたものもまた、元に戻ってしまってたんス」
「だから、100年前は私を治せなかったんだ」
喜助は頷いて続けた
「闘いなら大して影響は無いんスけど、紫苑のは話が別で…」
「うん…」
「その卍解の能力を永遠に持続させる研究を秘密裏にしていたんス」
そんなことをしていたことに、私はちっとも気づかなかった
「そしてその研究は、紫苑と別れてすぐに完成した」
目を伏せて悲しそうな顔をする喜助
「…皮肉でしたよ。ボクが卍解を人に知られたくなくて秘密裏にしていたが故に、研究が進まなくて紫苑と100年離れることになってしまった…」
「喜助さん…」
「本当にごめん…」
喜助さんは私に頭を下げた
その頭を私は優しく撫でた
「顔をあげて」
「紫苑…」
喜助が顔を上げた瞬間、紫苑は喜助に抱きついた
「私、喘息は治らないと思ってた。この体を恨んだりもした。喜助さんと離れなくちゃいけなくなってしまったのは、この喘息のせいだって…」
喜助は紫苑を抱き締め返す
「ずっと、私を治すことを考えてくれてたんだね。お薬だって作ってくれたし。私、なにも知らなくて…」
「紫苑は何も悪くないんスよ」
「…でもどうして、そんなに卍解を知られたくなかったの?」
少しの沈黙のあと、喜助は口を開いた
「弱かったんス…ボクは」
「弱かった…?」
「隊長になったのは、やりたいことがあったから。ただ、それだけなんス。誰かの上に立つ器量があるとか、隊を守る力があるとかそんなカッコいい理由じゃないんス」
紫苑を抱き締めながら、紫苑の肩に顎をのせて、体を委ねる