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With me

第45章 一緒に行こう



第45章 一緒に行こう



退院して最初に喜助さんに連れてきてもらったのは、双極の地下空間だった

胸が、苦しくなった


100年前、喜助さんが私のために海を作ってくれた

その海は、未だ綺麗に保たれている

きっと喜助さんの部屋が綺麗だったのと同じような理由だろう


そして、喜助さんと離れた場所…


私は喜助さんの手をぎゅっと力強く握った


喜助さんは私を安心させるように、強く握り返してくれた

ちょっと待ってて、と喜助さんはこの空間に結界を張り始めた

それは何重にも張られた強固なもの


一体どうやって私の喘息を治すというのか…


結界を張り終わると、喜助さんが再び近くに来た


「これから見るもの、絶対誰にも言わないと約束してください」

「……はい」


紫苑に緊張が走る


「それから、ちょっと気持ち悪いかもしれないけど、耐えてくださいね」


気持ち悪い?

ますます想像がつかなかった


そして喜助さんは杖を前に出して、解号を口にした


「起きろ 紅姫」


喜助さんの持っていた杖が、馴染みのある刀身に変化する


そして


「卍解 観音開紅姫改メ」


紫苑は目を見開いた


昔、卍解はどんなものかと聞いたら、教えてもらえなかった

夜一さんさえも、知らないらしい

喜助さんの声のあと、その後ろにはかつて会ったことのある紅姫が、巨大化して存在していた


喜助さんの手がそっと私の胸元に触れたあと、優しく笑って、紅姫の切先を触れさせた


大きくなった紅姫が、私の胸元をその大きな手で包んでクチクチと音をならし始めた


まるで、優しさに包まれているような、からだを弄くられているような、暖かいような、冷たいような、心地良いような、気持ち悪いような…


よくわからない感じだった


一瞬のようにも、数時間のようにも思えた

意識が遠くなりそうな時、視界が晴れて、私は天井を見上げていた

あぁ、終わったんだ…

大きかった紅姫は、もうそこには居なかった


「ちょっとそのままでいてね」


喜助さんが私の胸元に何かを埋め込んでいる

発信器をつけたときと同じように


「はい、終わったっスよ」


紫苑はゆっくりからだを起こすと、自分の胸元に手をあてた
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