第44章 何泣いてるの
「紫苑、アンタ入院してるの?」
「はい。でも週明けに退院できそうなんです」
「なら退院したら一緒にご飯でも行きましょーよ!アンタの話色々と聞きたいし」
隣で修兵が俺も俺も、とあわよくばを狙っている
「すみません。私、退院したらすぐ現世に行くんです。また別の機会にお願いします。あ、そろそろ失礼しますね」
「えーもう帰っちゃうの?」
「すみません。外出許可半日で、それとあんまり遅くなると迎えが来ちゃうので」
「迎え?」
紫苑が執務室の扉に手をかけた時、不意にその扉が勝手に開いた
「浦原……?」
「あら浦原さん!」
冬獅郎と乱菊は意外な顔をして、修兵はやっぱりといった顔をしている
「日番谷隊長、松本サン、檜佐木サンお疲れ様っス」
喜助はペコリと頭を下げると、紫苑の持っている資料を預かった
「迎えに来たっスよ。虎徹サンから1人での外出を認めたって聞いたから…」
「もぅ、喜助さんは心配性なんだから」
「スイマセン。アタシの 紫苑 がお世話になりました」
アタシの"紫苑"という部分に一際声音を強くして、にっこりと笑いかける
それじゃあ失礼します、と2人は仲良さげに十番隊を後にした
「ちょ、修兵!さっきのどういうこと?」
「どういうこともなにも、付き合ってるみたいっスよ。あの2人…でも諦められない者同士!日番谷隊長、頑張りましょうね!」
「い、いや俺は別に…」
なんとも思っていないように取り繕ってはいたが、日番谷の心は些か沈んでいた
…─
紫苑は十番隊からの帰り道を喜助と共に歩く
「心配しなくても私は喜助さんしか見えてないよ」
「なんのことっスか?」
「さぁね。早く帰ってご飯食べよ!」
と言って紫苑は走り出す
「ちょ、走るのは駄目っスよ!」
紫苑の体力は、まだ日常生活に支障がない程度なのに
「平気平気!たまには走りたいの」
たまには、という言葉に胸が締め付けられた
普段はなるべくゆっくり1日を過ごしている彼女だけど、きっと意に反して驚く程無くなっている体力に戸惑うことも多いだろう