第44章 何泣いてるの
「喜助さん早く早く!」
「はいはい」
紫苑に追い付くように小走りで追いかける
すると紫苑は急に足を止め、その場にしゃがみこんだ
「はぁ……はぁ」
「もう、だから言ったじゃないスか」
「はぁ……ごめんなさい」
と言いながらも、なんだか嬉しそう
ほら、これ持って。とボクが持っていた書類を渡すと、こないだと同じように紫苑を背中に乗せた
「卯ノ花隊長に怒られちゃうっスよ」
「それは、嫌かな……はぁ」
四番隊に着く頃には紫苑の体も落ち着いていて、卯ノ花隊長にもバレなかったと思う
そして、退院の日
最後の診察を受けた
「おめでとうございます。退院を許可します」
「ありがとうございます!」
「ですが…」
その3文字に、紫苑と喜助の背筋はゾクリと冷や汗をかいた
「まだ激しい運動は控えてくださいね?今はまだ走ったりしないように。体力が落ちていると、風邪も引きやすくなりますから」
紫苑と喜助は目を見合わせて、同じことを思った
バレてる…
「気を付けます」
「紫苑さん、現世にいってもいつでも此処に来ていいんですからね。私はあんまり現世に行くことはないけど、紫苑さんの担当として…友人として…っ」
「何泣いてるの、勇音さん」
「ごめんなさい、なんて言ったらいいか…うまくまとまらなくてっ」
涙ぐむ勇音を、紫苑は抱き締めた
「勇音さん、大好きだよ。色々とありがとう。此方に来たら顔出すね。清音さんにもよろしく」
「紫苑さん……っ」
その2人を喜助と卯ノ花は優しく見つめていた
「浦原さん、西園寺さんをよろしくお願いしますね」
「モチロンです」
そして紫苑は退院した
紫苑と喜助が居なくなった診察室
「卯ノ花隊長、本当に紫苑さん退院させて良かったんですか?まだ早かったんじゃ…」
「西園寺さんは、あの方の傍に居たほうが此処に居るよりずっと、安定すると思いますよ」
「確かにそうですねっ」