第44章 何泣いてるの
第44章 何泣いてるの
十番隊隊舎─
「たーいちょー!」
「うるせぇぞ、松本」
十番隊の執務室でいつもより、高い声で上司を呼ぶのは十番隊副隊長の松本乱菊
どうせくだらない世間話だろうと、何度もスルーしていたがなかなか止まない声に、いい加減返事をした
「聞きましたぁ?十二番隊の女神の話」
「ん……あぁ、話だけはな」
いつも眉間にシワを寄せているのはこの隊の隊長、日番谷冬獅郎
「噂によると、すっごい美人らしいですよ!」
「お疲れ様です。九番隊です。今月の瀞霊廷通信です」
「そこ置いといてくれ」
瀞霊廷通信を片手に入ってきたのは、九番隊副隊長、檜佐木修兵
「あ!修兵ー!修兵も知ってる?十二番隊の女神の話」
「…知ってますよ。俺つい先日失恋したばっかりですから」
はぁーと分かりやすく息を吐く修兵を、2人は見つめる
「あら、残念だったわね。ねぇねぇどんな子?」
「そりゃなんていうか女神っていうより、天使っつーか…こう笑顔がほわっとしてて、ふわっと良い香りがして、美人だけど癒し系っつーか…とりあえずどタイプだったんスよ…」
喋る度に彼女を思い出しては未練が捨てきれない修兵を、哀れみの目で見る冬獅郎と乱菊
「えーそんな可愛い子なの?ねぇねぇ隊長、私たちも会いに行きましょうよー」
「1人で行ってろ」
「えー隊長は気にならないんですか?」
「別に」
冬獅郎はさも興味無さそうに執務を続ける
「失礼します。十二番隊四席の西園寺紫苑です。日番谷隊長はいらっしゃいますか?」
その声にいち早く反応したのは修兵だった