第43章 色々ありがとう
ありがとう!と紫苑は満面の笑みを見せた
「100年ぶりに、会いに行こうと思って…ほったらかして怒ってるかな…」
少し俯いた紫苑の表情で、勇音はすぐに誰のことを言っているのかわかった
「…元気な顔を見せてあげれば、大丈夫ですよ」
「そうだね」
勇音は挨拶して部屋を出ていき、紫苑は過去に思いを馳せた
…─
翌日─
「それじゃあ行ってきます」
「浦原さん、くれぐれも無理させないでくださいね」
「モチロンっス」
四番隊を出て、喜助と向かったのは花屋
「すみません。お墓参り用にお花をお願いします」
「はいよ~」
と元気な声の女性は手際よく、相応しい花をまとめてくれた
「喜助さんも、100年ぶり?」
「そっスね」
花を受け取り、お金を渡し、店を出る
「なんか緊張するな…」
「ご家族も心配してるでしょうね」
「…うん」
100年ぶりの墓参り
きっと色々な思いが頭をめぐっているんだろう
段々と口数が少なくなってきてる
「ついた…」
西園寺家墓地
静かな土地に建てたお墓のまわりだけ、まるで手が施されたように草がない
まわりを見渡せば、生い茂る草花
「誰か、来てたのかな」
掃除されているのか、墓石は目立つ汚れはない
墓石に近づいた喜助はあることに気がついた
「この花…」
「なんか、凄く綺麗だけど…」
喜助は花に軽く触ると理解したように、優しく微笑んだ
「これはプリザーブドフラワーと言って、特殊な液体に花をつけて水分を抜き、長期保存を可能にしたものっス」
「…んと、つまり?」
自分が持ってきた花を飾りながら、喜助の説明に耳を傾ける
「つまり、枯れない花ってことっス。これを作る技術自体はそんなに難しいものではないんスけど、この花は尸魂界には咲いていないものです」
そこまで言われて紫苑もさすがにピンときた
「平子隊長…とか?」
「かも、しれませんね」
「そっか…来てくれてたんだ」
紫苑は喜助とともに、他の家族にも手を合わせると、帰り道を歩き始めた
「早くみんなに会いたいな…」
「もうすぐっスよ」
現世に行けたら、真っ先に会いにいこう