第42章 触れると、暖かい
「初めまして、四席の西園寺紫苑です。長い間空席にしていましたが、復帰しますのでよろしくお願いします」
その優しくふわっとした笑顔、どこからか香ってくる清楚な香り…俺は一瞬で心を奪われた
言わば一目惚れってやつだ
「か、可愛い…」
顔を赤くする檜佐木を不思議に思って、首を傾げる紫苑
いや、キョトンとした顔がこんなに似合う人が居んのか!
やばい、ドストライクだ…
きっとあれだ、運命の相手だ
でも、俺には乱菊さんが…
「それ、重そうだし持とうか?そうだ俺これから休憩だから昼飯でも一緒に…」
「おい檜佐木、紫苑はやめとけよ」
「なんでですか阿近さん!ハッ、まさか阿近さんの恋人ですか?嫌、だとしても関係ないっす!紫苑…あのさ」
言いながら修兵が紫苑の荷物を貰おうとすると、触れそうになる手に紫苑の体が強ばった
「あ…」
それに気づいた阿近が、修兵を止めようとした時、紫苑と修兵の間に割って入った人影が居た
「紫苑、ダメじゃないスか!勝手に居なくなっちゃ…心配したんスよ!」
「喜助さん!」
その人物の登場に修兵は目を丸くする
「え、浦原さんじゃないですか!」
その声に一瞬喜助は反応したものの、隣に居た勇音に目を向ける
「すみません、浦原さん。紫苑さん、涅隊長からの呼び出しで急ぎだったので、私が外出許可出したんです」
「そうだったんスか。ありがとうございます。でも紫苑、ちゃんと連絡しないとダメじゃないスか」
ちょっと意地悪く怒ってるのを顔に出してみた
それほど心配したということだ
「ごめんね、喜助さん。それよりこれの使い方って分かる?マユリさんに渡されたんだけど、難しいみたいで…」
「それよりって…いや、そりゃ分かりますけど」
「よかった!あとで教えてね」
「なんか軽くないスか…ボク怒ってるんスけど」
さっきより眉間にシワを寄せて、紫苑を見つめると紫苑は軽ーく瞳をウルっとさせて見つめ返してきた
「ごめんね、喜助さん。反省してます…」
あからさまにシュンと肩を落とす紫苑に、胸が痛まない訳がない
「は、反省してるならいいんスよっ」