第42章 触れると、暖かい
「紫苑様は、もう喜助様が迎えに来ないと思ってしまって…心が、折れそうでしたわ…」
「スミマセン…遅くなって」
喜助は申し訳なさそうに雪姫に頭を下げる
「だから、喜助様の薬が切れるときに、今度は私が眠らせましたの。そうすれば紫苑様は、命を絶つことはできませんから」
「紫苑を守ってくれたんスね。ありがとう」
「べ、別に喜助様のためじゃありませんわ!紫苑様の為ですの!」
「うん、でもありがとう」
感謝されるのに慣れていない雪姫は、顔を赤くして後ろを向いた
「でも、ちゃんと迎えに来てくださって安心しましたわ…」
「約束しましたから」
「…紫苑様は、毎日泣いていましたわ…どんな美しいものを見せても、泣き止んではくれなくて」
雪姫はこの100年の紫苑との日々を思い返していた
「口にするのは喜助様の名前ばかり」
「泣き止んでからも笑顔は消えて」
「私には紫苑様を笑顔にすることができなかった」
喜助は心にグサグサと刺さる雪姫の言葉を、しっかりと受け止めていた
「紫苑様から奪った100年…責任取ってくださいませ」
「もちろんっス」
言いたいことを言った雪姫は満足気に、再び斬魄刀へと戻っていった
四番隊に着く頃、紫苑が目を覚ました
「あ……れ、私寝ちゃってた?」
「ボクの背中が気持ちよかったんスねぇ」
「もぅ…雪姫は?」
「帰りましたよ」
斬魄刀を触ると、確かに雪姫を感じる
「何か話したの?」
「ちょっと、お説教されました」
「え?お説教?なんで?喜助さん悪いことしてないのに」
紫苑が雪姫を問い詰めようとするのを、咄嗟に制止した
「雪姫サンの言うことは最もです。ですから叱らないであげてください」
「なんのお説教?」
「それは秘密っス」
「えー」
四番隊の、いつもの病室に入ると眠気が襲ってくる
「おかしいな…さっきも寝たはずなのに…」
「あれは霊力の消耗のせいっスよ」
「……うん」
紫苑の瞼は徐々に重くなっていき、声も小さくなっていく
「疲れたでしょう。いきなり連れ出してごめんね」
「きすけさん…」
「はあい?」