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With me

第42章 触れると、暖かい



落ち着いてきた紫苑に安堵すると、喜助は酷く落ち込んだ


「情けないっスね…」


紫苑は下を向く喜助の手をとった


「阿近がね」

「…聞きたくないっス」

「喜助さんが頭下げたって教えてくれたの」

「…………え?」


彼がどんな100年分の想いを囁いて、紫苑が顔を赤くしたのか考え出したら頭がおかしくなりそうだったのに


「マユリさんに、お願いしてくれたんだね…」

「ボクのことで?」

「だって、嬉しくて…」


ニコっと笑う紫苑を喜助は抱き締めた


「ごめん、早とちりして…」

「ううん、ありがとう。100年たっても妬いてくれて嬉しいの」


喜助は紫苑の顎に手を添えると、上を向かせ唇を塞いだ


「……ん」


長い長いキスが終わるとき、少し寂しさが残った


「そろそろ帰ろうか。外出許可は半日だから、卯ノ花隊長に怒られちゃう」


喜助は紫苑を無理やり背中に乗せると、四番隊へと歩きだした


「ちょ、恥ずかしい…」

「大人しくしてなさい」

「……ハイ」


喜助さんの背中に乗るのも100年ぶりだ…

暖かくて大きくて、安心する…


「ところで疑問なんスけど…」

「ん?」

「ボクが紫苑に飲ませた薬は、効果は100年きっかりのはずなんスけど…」


100年以上眠り続けたことへの疑問がまだ残っていた


「あぁそれは…」

「私が眠らせたんですの」


2人のすぐ横に、純白の着物を着た雪姫がいた


「雪姫サン!久しぶりっスねぇ」

「後で紅姫お姉様に会わせてくださいませ」


照れながら言う雪姫に、喜助の斬魄刀はほんのり震えた


「雪姫サンが紫苑を?」

「喜助様の薬の効果が切れる頃、紫苑様は再び、命を捨てようとしてましたわ」


悲しそうに目を細めた雪姫を、目を見開いて見つめる


そして背中の紫苑に目線を移す


「眠っていますわ。恐らく私が出てきて霊力を消耗してしまったのでしょう」

「紫苑が死のうとしたって?」


喜助の心臓は心なしか速度を早める


「喜助様が迎えに来るのが遅いからですわ!」


まるで紫苑の気持ちを代弁するかのように、雪姫の言葉には怒りがこもっていた

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