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With me

第42章 触れると、暖かい



「現世調査任務?」

「半永久的にネ」


紫苑は訳が分からず喜助を見上げるが、喜助はニッコリと笑ったままだった


「つまり、退院したら現世に行けって言ってんだよ」


堅苦しいのは苦手だと言わんばかりに、阿近は頭をかく


「え、でも…」

「その代わり、四席をもう1人増やす。それと、定期的に報告業務。現世にいる限りは昇進は無し。それが条件だ」

「何か文句あるかネ?」


マユリは昔と変わらず、作業の手を止めずに背中を向けて話している


「いいんですか?」

「いいんスよ。隊長が仰ってるんスから」

「浦原喜助と離れて仕事に身が入らなくても迷惑だからネ」

「そういうことだ」


言葉は悪いのに、不思議と優しさを感じる

願ってもない条件に、紫苑は涙が溢れそうになる


「ありがとうっ、ございます……!」

「わかったなら早く行き給え、作業の邪魔だヨ」


紫苑はもう一度深く頭を下げると、喜助の後に続いた


その時後ろからグッと手を引かれて少しよろける


「わっ、」


顔の脇には阿近の姿があった

そして彼はコソッと私に耳打ちした

その言葉に驚いて頬を赤くした私を、喜助さんが奪いに来た


「何してるんスか?」


怒った表情の喜助さんを見た阿近は、すぐに私を手放し身を引いた

そのまま数秒睨みあい、喜助はくるっと背中を向け、紫苑の手を掴み隊舎を後にした


「喜助さん、ちょっと待って…」


背中が怒ってる

此方を振り向きもせず、私の手を掴みながらどんどん進んでいく


「喜助さん、聞いて…っ」


それでも振り向かない彼に必死に着いていくと、次第に息が上がってくる


「喜助……さ……、ハァ…」


喜助さんに掴まれている手に今までより力を入れ、空いてるほうの手は胸を押さえる

すぐに喜助は振り向き、自己嫌悪に陥る


「ごめん!大丈夫…?」


息を切らす紫苑の背中を優しくさする

返事が出来ない紫苑を隊舎の壁に座らせた


「ハァ、ハァ、ハァ……」


体力が落ちているのを知っていたのに、阿近サンに顔を赤くしたことにどうしようもなく嫉妬した

100年たっても、紫苑のことになるとちっとも余裕が無くなるなんて…


「ごめん…」

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