第42章 触れると、暖かい
「駄目に決まっているだろう?」
「そこを何とか」
様々な器具の中に怪しい液体が気泡を含んでいる
鼻をつまみたくなるような臭いが度々臭ってくる
相変わらず此処は…儂にはちとキツイな
「おい、何の騒ぎだ?」
「今、あの浦原喜助が来てるんだよ」
「あの、浦原喜助か?此処の初代局長で、元隊長にして、あの大規模な転界結柱を作った…」
「そう、その浦原喜助が理由はわからないが、隊長に嘆願しに来ているんだよ」
「何の?」
喜助とマユリの会話を興味津々に、聞き耳をたてる隊士たちが隊首室の扉を塞いでいる
「分からないかネ?可愛い弟子の頼みとはいえ、100年空けておいてやった四席がやっと戻ってこようというのに、何故易々と貴様の言うことを聞かなければいけないのかネ」
「弟子の頼み…?」
「俺です」
隊首室の大きな円柱形の容器の影からでてきたのは
「阿近サン……」
あの小さかった子供が、立派な青年になったものだ
「お久しぶりです」
阿近は軽く頭を下げる
「紫苑、目覚めたんですよね」
「えぇ…あの、阿近サン」
喜助はスゥと小さく息を吸って目を細める
「まさかとは思うんスけど…」
「安心してくださいよ。今更紫苑に手をだそうなんて、考えちゃいませんよ。まぁ、100年ほっとかれた紫苑が目覚めた時に、俺が傍に居てかっさらう予定だったことは認めますけどね」
「それは残念でしたねぇ」
皮肉にも似た、微笑みを隠しながら喜助は心の中で小さく安堵した
「大体紫苑の喘息はどうする気かネ?」
「やだなァ、アタシがその辺考えていないとでも?」
長くなりそうだと夜一は他の隊員が入れてくれたお茶を啜り、ソファに腰をおろした
「なぁ、紫苑て誰だ?」
「話しの流れだと、あのずっと空席だった四席ってことになるよな?」
「俺、聞いたことあるぜ。100年前くらいに居た、十二番隊の女神って言われていた人が、確か紫苑て名前だった気がする」
「私も聞いたことあるよ!昔十二番隊に居た先輩が、女神が居たって」
当の女神はこんな大事になっているとも知らずに深い眠りについている
「…阿近、君の意見を聞こうじゃないか」