第42章 触れると、暖かい
喜助がさっきまでと変わって真剣な表情で言う時は、大体あまり良い話しではない
「ボクのところに来るのなら、恐らく護廷は除籍されます…」
除籍…
それはそうだ
駐在任務でもないのに、現世に身を置くことは護廷を捨てるのと同じ…
空座町の駐在担当は十三番隊だと言うし、四席という立場から駐在任務は許されないはずだ
「私…まだ籍があるの?四席のまま?」
「そうみたいっスよ」
100年も眠っていたから、きっと自分の場所なんてなくなってると思ってた
「今すぐに答えを出さなくてもいいっスよ。退院までにゆっくり考えて。もちろんボクはすぐにでも現世に来て欲しいけど、紫苑が望むならこっちに居ても…」
最後の言葉を言った喜助さんの表情は、どこか寂しそうだった
この100年、精神世界でいつも考えていた
もし、迎えに来てくれたなら、私は迷わず着いていく
そう思っていたのに
私は…
「私、喜助さんに着いていきたい」
「紫苑…」
喜助の心が安堵のため息をつく
「でも…」
その言葉にドキリとした
それは夜一も同じようだった
「でも私、四席という立場を守りたいの…」
「紫苑、お主…何故じゃ」
紫苑なら二つ返事で着いてくると思っていた
それほどまでに四席という席次が重要か
「琴乃サンの為っスか…?四席に拘るのは」
紫苑は肯定するように沈黙した
「琴乃は確か…四席じゃったな」
「あの子が居たという証を守りたいの…他の誰にも、渡したくない…」
紫苑はそれだけ言って、体力が尽きたように静かに眠りに落ちた
「思ってもいない理由じゃったの…」
「……」
喜助は考え込むように扇子を口元に押し当てた
「どうするつもりじゃ?」
「そっスねぇ…」
喜助はしばらく考えた後、扇子をパチンと閉じて紫苑を見つめながら言った
「直談判に、行きましょうか」