第42章 触れると、暖かい
「そろそろ紫苑が窒息するぞ」
「夜一さん!」
紫苑はボクの腕を離れ、夜一サンに近づく
「よいよい、無理をするでない」
それよりも早く夜一が紫苑に近寄り、その体を抱き締める
「夜一サンのがよっぽど窒息しそうっスよ」
「嫉妬深い男は面倒じゃの~」
夜一は力いっぱい自分の胸元に紫苑を抱き寄せた
「紫苑、よく頑張ったの」
「よるいちさ……ん……っ」
「……もう変なことを考えるでないぞ」
紫苑は夜一の胸の中で何度も何度も頷いた
「100年、喜助さんの傍に居てくれたんですよね…」
「紫苑と別れた後の喜助の姿を見せてやりたいぞ。毎日のように紫苑の写真を見ては後悔しておったからな」
「毎日…?」
余りに意外な喜助の姿を想像して、紫苑は目を丸くする
「ちょ、夜一サン!余計なこと言わないでくださいよ!」
「飯も食わんと、後悔と自責の念に苛まれ、嘔吐しては痩せ細り…見てられんかったのぅ」
夜一は目を細めて口元をニヤリと口角をあげた
「あーもう!アタシのことはいいですから夜一サン!!」
喜助が冷や汗をかきながら夜一を制止する
「喜助さん、ほんとに…?」
「今のは忘れて!夜一サン勝手なこと言わないでくださいね!」
喜助さんは必死に誤魔化そうとするも、きっと本当のことなんだろう
そう思うと、そんな思いをさせてしまったという気持ちと、ちょっとだけ嬉しくもある気持ちが混ざりあって、なんだかくすぐったかった
カシャン
高い金属音が鳴ったと同時に
「………ハァ……」
紫苑は点滴の器具にすがりながら、その場に座り込む
「紫苑!」
咄嗟に夜一が叫ぶ
「大丈夫、横になりましょう」
喜助が紫苑を抱き上げると、紫苑は素直にその身を預けた
「ごめんなさい、中々体力戻らなくて…」
ベッドに横になった紫苑は体を落ち着かせる
「紫苑、無理をするでないぞ」
「ありがとうございます」
「話せる?」
紫苑は小さく頷く
「紫苑の喘息を治す前提の話しなんスけど…」