第42章 触れると、暖かい
今さらになって何を迷う?
100年ずっと、願っていたことじゃろうに…
「紫苑はまだ、護廷隊に籍があります。こっちに来るなら除籍させなければいけない。席官に常駐の駐在任務の許可が下りるとは思えないし、筋を通さなければいけない人もいます。かと言ってアタシは尸魂界に戻る気はありません…」
「紫苑の気持ちは?」
「喘息が治るなら、現世に来たいと言っています」
でも彼女も志を持って死神になった一人だ
それをボクのために捨ててしまうことは、避けたい
どうすればいいのか
考えても答えが見つからない
「もう一度、紫苑の気持ちをちゃんと聞いたらどうじゃ」
「そうっスね…」
そしてボクは、夜一サンと共に紫苑に会いに行った
…─
卯ノ花隊長と虎徹サンに挨拶をする
夜一サンは卯ノ花隊長から紫苑の今の状況についてや、接し方について説明を受けている
先に紫苑の部屋に向かう
扉に手をかけると、中から聞きなれないカラカラという音がした
気になって急いで扉を開けると、ベッドから降りて立ち上がり、点滴を引いた紫苑がいた
「あ、喜助さん!」
紫苑が立ち上がった姿が嬉しくて、驚いて立ち尽くしていたボクに向かって、足早に、まだ上手く動かない足を動かして歩いてくる
「きゃっ!」
目の前で足が縺れつまづき、点滴と共に倒れ込んでくる紫苑を抱き止めた
「大丈夫?」
「あ、ありがと。まだ上手く力が入らなくて…」
「ゆっくりでいいんスよ」
紫苑が体制を立て直し、喜助から離れようとしたとき、喜助の腕がそれを許さなかった
「喜助さん?苦しいよ?」
ぎゅうっと抱き締める喜助
紫苑は大人しく抱き締められていた
「迎えに来るのが遅くなってごめん。100年も一人にしてごめん…生きていてくれてありがとう」
「喜助さん?」
「ごめん、言いたいこと…いっぱいあったから」
私は100年前も、今も、変わらず愛されてる
そう思えた