第6章 初恋の人に似てる
「すぐできますから、ちょっと待っててくださいね」
十二番隊に配属されたとはいえ、技術開発局に来るのは最初の案内のとき以来だった
その時も入り口を入ったところだけだったから、ほとんど初めてのようなもので、心なしか緊張する
「見ない顔だな、また新しい局長の女か?」
紫苑が声のしたほうに顔を向けると、小さな子供がいた
でも白衣を着ていて、額には…角?
「あ、私は十二番隊の西園寺紫苑。あなたは?」
「俺は阿近。ここの局員だ」
こんな小さな局員もいるんだー、と感心していると阿近はまた質問してきた
「で、あんた局長の女?」
「ちっ、違うよ!」
急いで否定した紫苑を見た阿近はふーんと言いながら、喜助の入っていった部屋を見る
「忙しい局長があんな小っさい仕事するなんて珍しい…」
「そうなの…?」
小っさい仕事って…写真のこと?
「あんたさぁ」
ん?と阿近を見る
「局長にフラれたら俺んとこ来いよ」
相手は子供なのに関わらず思わずキュンとしてしまった
こんな小さいのに随分と男前なことを言う…
「こらこら大人をからかわないの」
返事に困っていると浦原隊長が部屋から出てきた
はい、と紫苑に2枚の写真を渡す
「すごい…本当に増えてる!浦原隊長ってなんでもできるんですね!ありがとうございます!」
キラキラした目で笑った紫苑に胸が鳴る
「これくらいならいつでもやってあげますよン♪」
その姿を少し離れた所から見つめていた阿近は誰にも聞こえない声で呟いた
(局長絶対アイツに惚れてるだろ…)
そのまま技局で仕事をすると言った喜助と別れて、私は隊舎へ急ぎ足で帰った
早くこの写真を琴乃に渡してあげたい
2枚の写真を大事に握りしめて…