第40章 さようなら
そこで紫苑は意識を手放した
「紫苑!紫苑!」
紫苑を抱き止めた喜助に夜一が叫びながら近づく
「喜助!お主紫苑に何をっ…」
喜助は紫苑を抱いたままゆっくりと立ち上がる
「ちょっと、寝かせてきます…此処で待っていてください」
「何処にっ!?」
夜一の問いに答えず喜助はその場を瞬歩で去った
「喜助っ……紫苑……っ」
…─
此処なら、悪いようにはしない筈…
「少し、冷たいけど…ごめんね」
紫苑の外套を脱がせ、木の根本、人目につくところに寝かせる
もう必要ないだろう隊首羽織をかけた
乱れた前髪を流し、紫苑の頬を両手で包み込む
あの時感じた紫苑の覚悟の目は、ボク無しで生きていく覚悟じゃない
死ぬ、覚悟だった…
だから、ボクは紫苑を…
「誰です!そこにいるのは!」
この声は…
よかった、この人なら…
喜助は外套を深く被り、紫苑の唇に自身の唇を重ねた
「愛してる…」
くっと歯をくいしばって、喜助はその場を離れ、現世に向かった
初めて心の底から本気で愛した
紫苑を残して