第40章 さようなら
「鉄裁サン、申し訳ないんスけど、これを全員に着せておいてもらえますか?」
「浦原殿はどちらへ?」
出入り口に体を向けた喜助に後ろから鉄裁が声をかける
「スミマセン、ちょっと…出てきます」
「浦原殿…」
「その必要はない」
「夜一サン」
戻ってきてたんスね…
集中していて気づかなかった
「どういう意味っスか…」
その時夜一の傍の岩影から、1人の影が伸びた
「喜助さん…」
「紫苑…っ」
泣き晴らした目には、ひとつの覚悟が宿っている
「喜助さん…夜一さんから全部聞いた…」
ボクの目をまっすぐに見つめて
「私も……私も連れてって!」
「なっ!」
その言葉に喜助、夜一、鉄裁は驚いた
「紫苑!何を言うておる!」
「自分が何言ってるか分かってるんスか?!」
ボクの荒げた声にピクリともせずに、紫苑は真剣な顔をしていた
「分かってるよ」
「分かってないっスよ!!ボクの行き先聞いてるんでしょ?…もう、尸魂界には、戻ってこれない…」
「…………」
「四十六室の決定は覆らない…」
ずっと考えてた
紫苑を傷つけずに伝える言葉を
でも駄目だった…傷つけずに伝える言葉なんて、見つからなかった
だからそのまま伝えた
「紫苑は、連れていけない…」
紫苑の心を傷つけるのを分かっていて…
それでも君はまだ、連れてってなんて言うんスか?
「現世に行けないのは、紫苑が一番分かっているでしょう…」
「それでもいい…」
「どういう意味っスか…」
喜助さんの顔には、悲しみと怒りが混ざっていた
「一緒に現世に行く…それで例え数日しか生きられなくても、喜助さんの傍に居たい…喜助さんの腕の中で終わりたい…」
「紫苑…」
「約束してくれたじゃない…ずっと一緒に居るって…」
「でも…」
紫苑は込み上げてくる涙を必死に抑え込んだ
「居なくならないって言ったじゃない……だから、最期まで……一緒に……居てよ……っ」
やっぱり無理だった
悔しいくらいに、泣き虫なのはちっとも変わってない
「やめてくださいよ…っ、最期なんて……そんなの、ボクが耐えられないっ……」