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With me

第40章 さようなら



「離してください!喜助さん探さないと…」

「だから落ち着きィ」


紫苑の腕を掴みながら俺は伝令神機で電話をかけた


「はい、平子サン?」

「喜助さん!!」


紫苑はその伝令神機を俺から取り上げて握りしめる


「紫苑!起きたんスか?」

「喜助さん、今どこ…」

「局っスよ?今から迎え行きますから、良い子で待ってるんスよ」

「……ぅん」

「まーた泣いてるんスか?相変わらず泣き虫なんスから」


そこで通話は切れた


「落ち着いたか?」


ソファに座り、俺が淹れたお茶を飲んで深い安堵のため息をつく


「すみませんでした…」

「別にエェよ」

「紫苑!」

「相変わらず早いなァ。紫苑ンことになると瞬歩の早さ増すんやない?」


喜助は瞬歩じゃないんで。と気になる言葉を呟きながら、紫苑の元へ向かう


紫苑の目からは止まったはずの涙がダーっと流れていた


「昨日はごめん」


紫苑を抱き締めながら謝ると、腕の中で首を横に振った


「よかった……っ」


喜助きたし、もう大丈夫やろ…


「ほんなら俺は帰るで。さすがに眠いわ」

「ありがとうございました」


平子が出ていって2人になった部屋に、紫苑の鼻をすする音が響いていた


「ちゃんと眠れました?」

「…………」

「聞いてもいいっスか?」


紫苑は小さく頷く


「なんだって眠ろうとしないんスか?夢見るのが怖いのは分かるけど、睡眠薬も飲もうとしないし…嫌、飲まないほうがいいのは分かってるんスけど…」


泣きはらした目で震える唇が、少しずつ言葉を繋いでいく


「寝たら……ね」

「うん」

「喜助さんが…」

「うん」

「居なくなっちゃうかもって…」

「うん…」

「目が覚めたら、喜助さんが居なくなってるかもって思ったから…」

「だから、眠ろうとしなかったんスね。ボクが居なくならないように」


ウルウルした瞳の端の、涙を指で拭ってもう一度強く抱き締める


「ねぇ紫苑、覚えてる?ボクらは永遠にお互いの居場所が分かるんスよ?」



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