第40章 さようなら
「せや、ここ一月程流魂街の住人が消える事件が続発しとる。原因は不明や」
「消える?どこかへいなくなっちゃうってことっスか?」
「アホか、それやったら蒸発て言うわ。大体蒸発やったら原因なんか知るかい。そいつの勝手やろ」
平子は人差し指をたてて、さっきよりも更に低い声で続けた
「ちゃうねん。"消える"ねん。服だけ残して、跡形もなく」
その言葉に喜助は驚いた
「死んで霊子化するんやったら着とった服も消える。死んだんやない」
死んだんじゃない?
「生 き た ま ま 人 の 形 を 保 て ん よ う に な っ て 消 滅 し た。そうとしか考えられへん」
「生きたまま人の形を保てなく……?」
喜助はその言葉の意味がよく理解できずに首をかしげる
「スマンなァ、俺も卯ノ花隊長に言われたことそのまま言うてるだけや」
平子は今の情報量ではお手上げかのように、空を見上げる
「意味わからへん。ともかく、それの原因を調べる為に今九番隊が調査に出とる」
…─
「なんやまだ寝とるんか」
「はい、あれからずっと…」
もう夕方…終業時刻やで…
寝すぎやろ、大丈夫か
俺は紫苑に付いててくれた隊員に礼を言って役目を交代した
俺も夜勤からの日勤でさすがに眠なってきたなァ…
紫苑に近づき乱れた髪をなおす
顔色は大分よくなったな
「…………っ……」
「紫苑?」
紫苑が急に眉間に皺を寄せてうなされ始めた
その目からは涙がこぼれ始めて
見てられなかった俺は紫苑を無理やり起こした
「紫苑!紫苑!」
ハッと目を開けた紫苑はぐっしょり汗をかいとって、肩と胸を大きく動かして呼吸していた
「大丈夫か?大分うなされとったけど…」
喜助の言ってた夢を見とったんやろか…
呼吸が落ち着いてきた紫苑は、みるみるうちに不安の表情へと変わっていった
「喜助さん……はっ!?」
「落ち着き、まだ仕事中や」
「探してきます!あの、ありがとうございました!」
なんて、突然立ち上がって出ていこうとするもんやから咄嗟に紫苑の腕を掴んどった