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With me

第40章 さようなら



「紫苑ー寝ないんスか?」


いつもボクが布団に入ると、待ってましたとばかりにすり寄ってくる紫苑が、今日はまだ文机に向かっている


「ん、眠くないから。先に寝てて」


眠くない、わけがない

だけど、前と違って今回は薬に手を出そうとはしてない


「じゃあボクも起きてようかな」


その意味がボクには分からなかった


「喜助さんは明日早いんだから、ちゃんと寝なきゃ駄目だよ」


自分だって仕事のくせに…

目の下のクマが日に日に酷くなっていって


「紫苑…」

「ほら、早く寝ないと。おやすみ」


気づかないとでも思っているんだろうか

6年一緒にいるというのに


「夢の、せいっスか?」

「…………」


眠れないんじゃない、眠ろうとすらしてない…


「ただの、夢じゃないっスか…」


そう言った自分に後悔した

琴乃サンのときだって、その夢に随分悩まされて

辛いのは、紫苑自身なんだって

そんな簡単なことにボクは気づかずに


紫苑を傷つけた


こっちを振り向いた紫苑はひどく、悲しい表情で、涙を流していた


「ごめ……」

「ちょっと夜風に当たってきます」


追いかけるべきか、迷った

そして、その足を止めた

自分が彼女を傷つけてしまったとき、どうしていいかわからなかった…

何処にも行く気はないというのに

何て言えば、安心させてあげられるんスか?


喜助は唇を噛み締めて、再び布団に寝転がった





…─





宛もなく歩いた

ただ、歩きたかった


幸い誰ともすれ違わずに、1人物思いに更けることができた

喜助さんの発信器に、常に気を張って

私の心配なんて、他の人から見ればただの杞憂に過ぎないのかもしれない


「何しとんや、紫苑…こんな時間に」


隊舎周りをウロつく弱々しい霊圧が気になって来てみれば…


「平子隊長……こそ」

「俺は夜勤や」


そんな薄着の寝巻きで…


「眠れないんか?喜助は?」


こんな遠くまで…


「部屋にいますよ…」


元気無くて…


「喧嘩でもしたんか?」


さすがに気になるやろ…


「別にそんなんじゃ…」


ふわっと、肩に大きな白い羽織がかかる


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