第38章 今度は失わないように
「相変わらずベタ惚れじゃのぅ」
「そりゃ、初めて本気で愛した人っスから」
その会話を紅姫は2人の少し後ろで、静かに聞いていた
もう花の数は半分ほどになっただろうか
「紫苑の卍解の修行がこんな感じでホッとしておるか」
「そりゃあモチロン」
いつの間にか最後の3つになっていた
「最後の3つはサービス問題ですわ」
小さく小振りな、淡いピンクの薔薇
「姫乙女」
小さいながらも存在感を放つ真っ赤な薔薇
「紅姫」
白く可憐な花を咲かせる
「雪姫」
全てに答え終わった紫苑の頭上に、たくさんの花吹雪が舞っていた
「お見事ですわ!紫苑様!」
「やったの、紫苑」
「おめでとう、紫苑」
「あ、ありがとう!」
雪姫が紫苑に斬魄刀を握らせる
「さぁ、私の後に続いて唱えてくださいませ」
紫苑は小さく頷いて、雪姫の言葉を待った
「卍解 百花繚乱花吹雪」
紫苑がその声を発した時、斬魄刀は形状を変え、紫苑の身長よりも長い槍のような、杖のような形に変形した
先端には白い薔薇が水晶玉に包まれている
それを取り巻くような装飾、シャラリと揺れる宝石のように光る石
そして、自分自身を球体の結界のようなものが覆っている
「綺麗…これは結界?」
「その通りですわ。この結界を他者にも与えることができますわ」
紫苑は雪姫に教えてもらった通りに動く
「護り雪姫」
そういって、杖の先端を喜助、夜一、紅姫の順で向けると、3人にはそれぞれに紫苑と同じ球体の結界が張られた
「凄いっスね…」
「珍しい卍解じゃの」
紫苑が張った結界に感心していると、紫苑は次なる技を雪姫に教えてもらっていた
「花紋」
すると杖の先の水晶の周りを渦巻くように、光のようなエネルギーが集まる
そのエネルギーが大きくなったとき、紫苑は杖を一振りした
「──ッ!!」
目標にした岩に花の紋様が浮かび上がり、一瞬時が止まったかのような静寂の後、視界が真っ白になる
次の瞬間鼓膜に響く轟音、自らの周囲を駆け巡る爆風、土煙……
結界の中にいても思わず腕で顔を塞いでしまう