第38章 今度は失わないように
「うむ、素晴らしいですぞ!紫苑殿!是非とも鬼道衆にスカウトさせていただきたい!」
なんて鉄裁さんが私の手を握って言うもんだから、喜助さんがやきもちやいて
「絶対ダメっス!!」
って必死になって…
嬉しかった
そして修行を始めて半年が経った
「のぅ喜助、そろそろ良い頃ではないか?」
「そっスね、お願いします」
紫苑は話の内容が掴めずに頭に疑問符を浮かべる
「紫苑、そろそろ卍解の修行をしてみるかの」
「ば、ばんかい?!」
本来卍解とは普通に修行して10年かかると言われている奥義
紫苑はまだまだ先だと思っていた
「でも私まだ、具象化もできてなくてっ」
「心配はいらんぞ。喜助の秘密兵器があるからの」
「そうなの?」
喜助はニコニコと笑っている
「修行にはこれを使う」
と、どこから持ってきたのか夜一さんの手元には人形のようなものが置いてあった
「これは転神体といっての、隠密機動の最重要特殊霊具じゃ」
「そ、そんな大事なものダメですよ!」
「いいんスよ。隠密機動総司令官が仰ってるんスから」
なんか今さらだけど、私凄い人たちに稽古つけてもらってるよね…
「これに斬魄刀を突き立てると強制的に具象化される。その状態で斬魄刀を屈服させるのじゃ」
「屈服…」
「ちなみにこれで卍解に至ったのは喜助だけじゃ。まぁ喜助以外に試すのは紫苑が始めてじゃがの」
屈服とは、斬魄刀それぞれ違うと聞く
力で捩じ伏せるものばかりではない…
「タイムリミットは3日っス。ちなみにボクはその3日で卍解に至りました。と、同時にそれ以上は危険と判断しました」
「3日って、通しだよね?仕事は?」
「ヤダなぁ。休みにしてあるに決まってるじゃないスか」
「そ、そうなの?」
「だから、心置きなく修行に励んでくださいね」
随分用意がいい…きっとまた職権乱用したんだろう…
紫苑は転神体に近づいた
そして雪姫を転神体に突き立てた
一瞬白い光が辺りを包み、目を瞑った
目を開くとそこには雪姫がいた
白い着物に薔薇の模様…
白い髪、透き通る羽衣
まるで天女のように美しかった