第38章 今度は失わないように
「夜一さん!喜助さんの前で裸にならないで!」
「えー駄目かのぅ?」
「夜一サンこそ、しおらしいの似合わないっスよ」
喜助の背中に夜一の蹴りが綺麗にヒットする
「駄目駄目~!喜助さん見惚れちゃうから絶対駄目!!」
「ボクは紫苑のカラダしか興味ないんスけど…」
そう言って紫苑の膨らんだ胸を流し目で見つめる
「もう!喜助さんのえっち!」
「ほれ、さっさと入らんか」
温泉に先に入った夜一は、いつの間にか猫の姿になっていた
「こらこら駄目じゃないスか、タオルなんか巻いたら」
紫苑の体を覆っているタオルに手をかけようとしたところをヒュッと黒い何かが過ぎ去る
「いったぁ…」
喜助の手には3本の赤い線がくっきりと残っていた
「夜一さんありがとうございます」
温泉に入るとシュワシュワ~と細かな傷が消えていく
「そういえば喜助さん、雪姫に触れたんですね」
「そういえばそうっスね」
霊術院に居た頃、一度興味本位で喜助さんが触った時は、喜助さんは指を火傷してしまった
「なんの話じゃ?」
夜一は不思議そうに紫苑の斬魄刀に目をやる
「紫苑の斬魄刀は、紫苑と琴乃サン以外が触ると攻撃してくるんスよ」
「ほぉー儂も触ってみて良いかの?」
「火傷しても良いなら…」
紫苑は心配そうに夜一を見つめ、夜一は猫の姿のまま雪姫に手を伸ばす
バチバチッ─
「な、なるほど…」
夜一はヒラヒラと手を振りながら手の先を温泉に浸からせる
「すみません…」
「よいよい、紫苑が謝ることではない」
「理由は未だ教えてくれないんスか?」
「うん、気分屋なせいもあるのかも」
雪姫は気が強くて、好き嫌いがはっきりしている
私とは正反対
そういえば喜助さんの紅姫はどんな人なんだろ…
修行は主に喜助さんが斬術、夜一さんが白打と歩法、そして鬼道は、大鬼道長の握菱鉄裁さんが教えてくれた
なんでも鉄裁さんと喜助さんは昔夜一さんのお屋敷でお世話になった仲なんだとか…