第38章 今度は失わないように
第38章 今度は失わないように
体調もほとんど元通りになった私は、隊に復帰した
喜助さんの計らいで仕事量も抑えてもらっている
ご飯もまた食べられるようになって、夜も薬はしばらく飲んでいない
そして喜助さんと、夜一さんと初めての修行の日
「はい」
喜助さんに渡されたのは、ずっと預かってもらっていた私の斬魄刀 雪姫だった
「おかえり、雪姫…」
愛しそうに雪姫を抱き締める
「今日は斬術の稽古じゃから、儂は見学とするかの」
夜一が適当な岩場に向かって背を向けたとき、私は雪姫を鞘から抜いた
ドクン─
身体中の血液が、唸るのを感じた
「あ………」
「紫苑?」
フラッシュバック
琴乃を刺した感触が、重みが、刀を伝って私に流れ込んで来る
刀を持つ手がカタカタと震えた
頭からあの光景が離れなくて、瞬きも忘れて、動悸がする
「っ……ぁ……」
目から涙が溢れそうになったとき
「大丈夫」
「儂らがついてる」
いつの間にか紫苑の近くにきていた夜一さんと、喜助さんの手が私の震える手を包み込む
そうだ
強くなるんだ
護れるように
もう一度、この雪姫と共に
今度は失わないように
紫苑の震えが止まった
呼吸を整えて、雪姫を握りなおす
「ありがとう、もう大丈夫…」
安心した夜一は先程の岩場に戻り、喜助は紅姫を抜いた
「よろしくお願いします!」
…─
「って、なんで喜助さんまで温泉入ろうとしてるの?!全然ケガしてないじゃん」
「えー駄目なんスか?」
「お主が目をウルウルさせても1ミリも可愛くないぞ?」
夜一は気にせず服を脱ぎはじめる
ウルウルした喜助の瞳を見て
「うっ…か、かわいい」
「紫苑、目は確かか?」
夜一は飽きれ顔で紫苑を見つめる