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With me

第37章 雨が、やんだ気がした



「紫苑」


平子が低い声で紫苑に声をかける


「はい」


何かを感じ取った紫苑もまた、低い声で答える


「俺、もういっぺんちゃんと謝りたい思ててん…ご免な」


平子隊長が、謝る必要は無いのに…

でも、その気持ちが嬉しかった


「私こそ、あの時取り乱してごめんなさい」


頭を下げた

すると平子隊長はフッと笑って


「仲直りやんな」


と、言ってくれた

そして平子が差し出した手を、紫苑が握ろうとした


「握手する必要はないっスよーん」


ズカズカと喜助が間を割るように真ん中に立つ


「ご挨拶やんけ」

「ボク以外の手握っちゃ駄目っスよ」


平子はそんな喜助を、あんなァ…と呆れた顔で見る


「束縛激しいと嫌われるで」

「束縛じゃないっス。愛っスよ。愛するが故っスよ」

「あーカユイカユイ」


私は2人のやり取りを、後ろから微笑ましく見つめていた


「また墓参り来たってや」


平子隊長は優しい表情で、墓石を見つめていた


「喜助と紫苑が仲良ォしてんの見たら、琴乃も安心するやろから」


これは只の墓石で、琴乃が居る訳じゃない

そんなことは皆分かっている

でも、それでもこれにすがりたくて

話しかければきっと、聞いていてくれると信じたかった


「平子隊長も…もし、琴乃じゃない違う子と…そういう…ことになっても…」


琴乃のこと忘れないで欲しい




…馬鹿だな私

これから平子隊長は、まだまだ長い時間を過ごす

工藤さんを失った琴乃が、それを乗り越えて平子隊長を好きになったように

きっと平子隊長もいつか…


「痛っ」


コツン、と頭に落ちた拳骨


「アホ」


それだけ言って、平子隊長は歩きだした


「行きましょ、紫苑」


平子隊長が、ずっと琴乃のことを忘れないで居てくれたら、嬉しいです


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