第37章 雨が、やんだ気がした
「やるには1つ条件があるっス」
「え?」
その言葉に夜一と紫苑は喜助を見る
「ちゃんとご飯を食べて、ちゃんと睡眠をとって…稽古つけるのはそれからっス」
「…はい!」
その言葉には夜一も納得だった
喜助さんの優しさが染みてきて、思わず目が潤むのを必死で押さえる
「さ、帰りますよ」
「早く体調治すんじゃぞ」
「はい!」
…─
翌日─
「なんだか紫苑さん、調子良さそうですね」
「勇音さんのおかげかな」
「またそんなこと言って、浦原隊長でしょ」
「みんなのおかげだよ。私はたくさんの人に支えられて、生かされた…」
すぐにご飯が全部食べられようになるわけでも、すぐに薬無しで眠れるようになるわけでもなかった
それでも喜助さんはゆっくり、私が回復するのを待ってくれていた
回数は減ったけど、胃炎だって未だに体を蝕む
「もう少し体調が回復したら復隊できる?」
「あと少し、頑張りましょう。紫苑さんのペースでいいんですよ。ゆっくりで。それから、戻ってきてくださいね」
ありがとうと微笑むと、勇音は久しぶりに見た紫苑の笑顔に安心した
その日の夜─
「ただいま、紫苑」
「お帰りなさい、喜助さん」
「良い子にしてたっスか?」
よしよしと子供にやるように頭を撫でる
「あのね、次のお休みの時に一緒に来てほしいところがあるの」
「え、なんスか?」
「お墓をたてようと思って……琴乃の」
「そっか、決めたんスね…」
ずっと、踏ん切りがつかなかったみたいだけど、やっと気持ちが固まったみたいだ
「それで、平子隊長も、どうかなって…」
「平子サンか…聞いてみますね」
…─
数日後─
紫苑と喜助と平子は西園寺家の墓地がある場所に来ていた
「そっちのお墓は工藤サン?」
「うん、ていっても形だけなんだけど…」
「誰や工藤て」
えっと…良いよどむ紫苑に助け船を出すかのように、喜助が毅然と答えた
「西園寺家の使用人ですよ」
「琴乃も形だけになっちゃうんですけど…」
お墓の設置が終わって、3人で手を合わせる
スッキリした顔の3人がそこにあった