第37章 雨が、やんだ気がした
「琴乃サンはね、生きてるんスよ」
「え?」
「紫苑のここに」
そう言って差したのは、私の胸元
「琴乃サンは、紫苑の中で生き続ける」
「私の中で?」
「紫苑だけじゃない。ボクや、ひよ里サンや平子サン…みんなの心の中で、琴乃サンは生きているんスよ」
光が差した、気がした
「紫苑が泣いてると、琴乃サンも悲しいよ」
喜助さんは、いつも私を暗闇から連れ出してくれる
ずっと曇っていた景色が、光を少しずつ取り戻していた
心が凄く軽くなった
ずっとかかっていた鎖がとれたみたいに
雨が、やんだ気がした
ポロポロと涙がこぼれる私を優しく抱き寄せる喜助さん
「…私、泣くのはこれで最後にする」
「紫苑…」
「喜助さん、大好きだよ。いつも私の傍に居てくれてありがとう」
それは、久しぶりに見た紫苑の笑顔だった
胸がきゅっとなって、ひどく安心した
「やっと笑った…やっぱり紫苑は笑顔が一番スね」
紫苑の顎に手を添えて、優しくキスをする
「愛してる」
はにかんで、照れた笑顔がそこにあった
…─
その日仕事を終えたボクが部屋に戻ると、紫苑の姿がなかった
血の気が引いていくのを感じる
霊圧を探っても見当たらない
急いで隊舎に戻った
「なんや喜助、帰ったんやなかったんか」
「紫苑がいないんス!紫苑の霊圧がない…」
ひよ里は一瞬顔を歪めたが、すぐに元に戻して
「なんの為に発信器つけたんや」
喜助はハッとして発信器で紫苑の居場所を確認する
「ありがとっス、ひよ里サン」
喜助は瞬歩で紫苑の居る場所に向かった
双極の地下深く…そこに紫苑は居た
「元気になったようじゃの」
「ご心配おかけしました」
「喜助か」
ニヤニヤと夜一は紫苑に目線を配る
「喜助さんがいなかったら、多分私…」