第37章 雨が、やんだ気がした
「…紫苑はどうしてるんや?」
「ボクの部屋で療養中っス」
喜助の隣に腰かける
「退院したんか」
「まぁ一応」
「もっぺん、ちゃんと謝りたいんやけどな…」
あれ以来2人は会っていない
かといって、今の紫苑の状態を考えるとまだ平子サンには会わないほうがいいんじゃないかと思う
「なァ、俺…アイツのこと幸せにできてたやろか…」
遠くを見つめながらため息をつく平子
「幸せだったと思いますよ」
そこへ四番隊の隊員が申し訳なさそうに近づいてきた
「休憩中失礼します」
「誰や?」
「あぁ、ご苦労様」
隊員は喜助に小包を渡し去っていった
「なんやそれ?」
平子が不思議そうに見る
「紫苑の薬ですよ」
「また薬飲んでるん?」
「ボクが居ないときはこれがないと眠れないみたいで…」
喜助は包みを軽く開けて中を確認する
「睡眠薬か。クセになんで」
「でも卯ノ花隊長が無理にやめさせるとかえってよくないって言うんスよ」
包みを閉じて、干し柿の隣に置く
「卯ノ花さんが言うんやったらまぁ、そうなんやろうけど…」
少しの沈黙…
「…スマンかったな、紫苑のこと責めたりして」
「仕方ないっスよ…」
干し柿を食べ終えた平子は立ち上がり、また来るわと隊舎に戻っていった
さすがの平子サンも、まだ元気なかったっスね…
今日は仕事も少なかったし早く帰れる
そう思っていた矢先、局員のミスでいくつかのデータが飛んで、その復旧に時間がかかり、帰るのがすっかり日を跨いでしまった
連絡は入れたけど紫苑、ちゃんと眠れたかなぁ…
部屋につくと明かりは勿論消えていて、中からは小さな寝息が聞こえる
起こさないようにゆっくり中へ入り、着替えをして布団に入る
「遅くなっちゃってごめんね…」
小さな声で囁くと、喜助は紫苑の頬に触れた
濡れてる…
目をこらして見ると、涙が頬を伝った跡が見える
布団の脇には薬袋と水…
「また飲んじゃったんスね…」
喜助は愛しそうに紫苑を優しく抱き締めると、自身もすぐに眠りに落ちた