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With me

第37章 雨が、やんだ気がした



「え?退院?」

「えぇ。体のほうはもう完治していますから、ご自宅でゆっくりと療養なさっては如何かと思いまして」


卯ノ花隊長の優しい笑顔…

そうだ

四番隊だって暇じゃないもんね

体の傷が治っているなら、退院したほうがいいに決まっている


「分かりました…」

「日中は交代で隊員を行かせますし、定期的に私も診させていただきますから」




翌日─



私は退院の準備をしていた

欲をいえばこのまま入院していたかった

入院していることが多かったからか、ここは私にとって落ち着く場所になっていたし、ここに居ればきっと気持ちも落ち着いていられる


「喜助さん」


でも、それ以上に落ち着く場所がある


「準備終わりそう?」

「うん、もう少し」


準備が終わると、荷物のほとんどを喜助さんが持ってくれた

ゆっくりと私に合わせて歩いてくれる


「隊舎に寄って荷物取ってきてもいい?」

「うん、ボクも一緒に行くよ」


隊舎に入ると隊員たちがどっと押し寄せてきた


「西園寺さん!お久しぶりです」

「退院されたんですね、良かった」

「お身体大丈夫ですか?ずっと心配していたんですよ」


みんな…

心があったかくなった


「みんなありがとう…。まだちょっと休むけど、必ず戻ってくるから」


自分の執務机に向かい、荷物の整理を始めた


「ボクちょっと隊首室に寄ってきますね」


喜助さんと入れ替わりで、ドタドタと足音が聞こえる


「紫苑!!」

「ひよ里さん」


思い切り抱きつかれて思わずよろける


「大丈夫か?退院したんやってな。ウチにできることあったらなんでも言いや?」

「ありがとうございます。ご迷惑かけます…」

「喜助居るんやろ?ウチちょっと忙しいから、これでご免な」


忙しい…はずだ


四席と五席がいないんだもん

その皺寄せは自然とその前後の席次にいく

いつまでも休んでられない

みんなに迷惑かけてる…


荷物をある程度まとめ終わって、喜助さんを待っていると、ふと、他の執務机にあった書類に目がいく



─東雲琴乃 殉職─



その瞬間、あの時の光景が鮮明に映し出された

体が強張って、息が…できない…

苦しい……気持ち悪い


「西園寺さん?」



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