第37章 雨が、やんだ気がした
第37章 雨が、やんだ気がした
琴乃サンの死から二週間
ボクは卯ノ花隊長に呼び出された
「すみません、お呼び立てしてしまって」
「いえ、紫苑のことっスか?」
その場には虎徹サンも居た
「えぇ、浦原隊長に相談なのですが…西園寺さんを退院させようかと思うんです」
「え?退院スか?」
確かに傷は完治している
日常生活も問題無い…
「でも、紫苑の精神状態はまだ不安定っスよ」
「浦原隊長、西園寺さんが睡眠薬を飲んでいることはご存知ですか?」
「睡眠薬?」
まさか、紫苑はそんなこと一言も言っていなかった
「西園寺さんには口止めされていたんですけど、入院してすぐ、睡眠薬を処方してほしいと言われました」
「まだ、眠れてないんスか?」
卯ノ花は静かに頷く
「睡眠薬は本当に眠れない時だけにしてくださいと言ってはあるんですが…恐らく毎日飲んでいると思われます」
「毎日…」
「多分眠るのが怖いんでしょうね。夢を見ると言っていました」
夢…とは、多分あの日の夢…
それで眠るのが怖くなってしまったんだろう
「ただ、浦原隊長、あなたが来た時だけは、よく眠れたみたいですよ」
「ボクが…」
あの日、紫苑から電話があった日を思い出す
"私が眠るまで……手、握って……"
あの日もきっと、眠るのが怖かったんだろう
「栄養は点滴でなんとか補っています。睡眠薬は不安や緊張感を和らげたりする効果もありますが、依存性、副作用があり、日常的に飲むと薬無しでは寝られなくなる可能性があります」
「あのっ、退院させて、夜なるべく一緒に居てあげてくれませんか?日中はうちの隊員を交代で付かせます。お仕事が忙しいのは重々承知しています…。浦原隊長の負担にならなければ…」
「ボクが紫苑のことを負担に思うわけないじゃないですか」
喜助はフッと笑って、よろしくお願いします。と頭を下げた
「あ!ありがとうございます!」
「西園寺さんには私から説明しておきますね」
喜助はもう一度軽く頭を下げると、隊舎へと戻っていった
「西園寺さんは良いパートナーと出会いましたね」
「なんか、羨ましいです。本当に素敵な2人ですね」