第5章 気になる人って…
紫苑は体を起こし、先ほどあったことを話す
「そう、災難だったわね。…それって」
沙也加は紫苑がかけている羽織を見つけて驚く
「こ、これはその…隊長が…すみません…」
「なんで紫苑ちゃんが謝るの」
「だって隊長は…沙也加さんの…」
好きな人…なのに
こんなの私が借りてたらいい気しないよね
「気にしなくていいのよ!でも…」
「え?」
「確か夕方一部の隊長たちで集まりがあったと思うから、これ必要だと思うから私から返しておくわね」
紫苑が返事をするよりも早く、沙也加さんは紫苑が脱ごうとしていた羽織を軽く奪うようにとり、じゃあゆっくり休んで、と仮眠室を出ていった
…やっぱり気分悪かったかなぁ
だけど、ちょっと残念だなぁ
せっかく隊長が貸してくれたのに…
でもきっと隊長はいろんな女の子に、同じようなことをしているんだろうな
考え事をしているうちに紫苑は眠ってしまった
「…サン、紫苑サン」
紫苑は静かに目を開ける
「た、隊長!え、今何時ですか?」
「もう終業の時間ですよ」
紫苑は寝てていいと言われたとはいえ、本当に寝てしまったと、後悔した
「すみません!私、寝過ぎちゃったみたいで…」
「疲れてたんスよ」
「浦原隊長、そういえば集まりがあるんじゃ」
あれ、羽織を着ていない
「集まり?」
「それで羽織が必要だからって、沙也加さんが…」
浦原隊長は不思議そうな顔をしている
「あ、紫苑ちゃん。気分はどう?」
扉が開いたままだったところに、沙也加が入ってくる
その手には隊長羽織があった
「ごめんね、私の勘違いだったみたい!はい、浦原隊長」
「あ、ありがとっス」
「あ、紫苑ちゃん!執務室で琴乃ちゃん待ってるから」
「はい、お疲れ様でした」
女の勘…ってヤツかな
何か違和感を感じる紫苑は、間違いだったらいいのにと思っていた
執務室に戻ると、琴乃が待っていた
「紫苑!もう大丈夫?」
「大丈夫、大げさよもう」
「ならよかった!」
琴乃が出ていったあとに起きたことを話しながら、2人は帰り道を歩いた