第36章 私にもっと、力があったら…
紫苑は何かあると睡眠と食事を疎かにするから…
「あの、紫苑、食事はちゃんと取っていますか?」
虎徹サンは首を横に振る
「多分明日あたり、点滴いれなきゃいけないと思います」
「そうですか…よろしくお願いします」
…─
「ねー、拳西ー。紫苑ちんのお見舞い行ーきーたーい」
「あァ?無理だっつってんだろ。面会謝絶中なんだよ」
「だってー、うらたんは会ってるじゃんかー」
「あの人が居らんと紫苑生きられへんからな」
「そういうことだ。お前とは格が違うんだよ」
「ひよ里、ずっと黙りこんでどないした?」
「…いや、紫苑と真子のためにウチらにできることないやろかって…」
「さすがのひよ里もこんな時ばかりは、真子に優しいな」
「羅武、紫苑は戻って来れるやろか…」
「どうだろうな。浦原隊長次第じゃねぇの?」
…─
目が覚めたら、喜助さんはいなかった
仕事の途中で来てくれたんだもん
当たり前か…
あの日以来、久しぶりに落ちついて眠ることができた
それは喜助さんが、手を握ってくれていたからだろう
琴乃を手にかけたこの手を、それでも喜助さんは握ってくれた
血に濡れた手を…
「紫苑さん、おはようございます」
「勇音さん…おはよう」
点滴いれますね、と手がつけられてない食事を横目に彼女は準備を始める
「昨夜はよく眠れました?」
「うん、久しぶりに眠れた気がする…」
「あ、あの…私でよければもっと頼ってくださいね」
紫苑は驚き、勇音の顔を見上げる
「そりゃ、琴乃さんの代わりにはなれないかもしれないですけど…」
点滴の針を私の腕に刺しながら、苦笑いを浮かべる勇音さん
「代わりなんかじゃないよ…」
「え?」
「勇音さんは勇音さん。私の大事な友達だから」
「紫苑さん…照れます…から」
良かった
久しぶりに落ち着いてるみたい
本当、浦原さんが居なくなったら、どうなってしまうんだろう…