第36章 私にもっと、力があったら…
「平子サン……スミマセン」
「分かった…………ホンマにスマンかったな……」
平子は肩を落とし、部屋を後にする
「紫苑、大丈夫?」
「…っ」
「…余り自分を責めないで」
紫苑はそのまま瞳を閉じた
…─
あの日から、毎日あの日の夢をみる
その度に気が狂いそうになる
自分を斬り捨てたくなる
その度に刀がなくて、喜助さんに預けておいてよかったと思った
寝ようとすると自然と涙が溢れてきて、動悸がしてくる
また夢をみるんじゃないかと思うと、怖くて眠れなくなって、強制的に睡眠に落ちるまでその葛藤は続いた
「卯ノ花隊長…」
「あら、西園寺さん。どうされました?」
「…お願いがあるんです」
…─
「紫苑の様子はどうじゃ?」
「夜一サン」
紫苑はまた当分四番隊に入院することになった
体の傷はほとんど治った
問題なのは、心の傷…
喜助は静かに首を横に振る
「辛いじゃろうな…」
夜一も、喜助と同じように紫苑を心配していた
「それは?」
夜一は喜助の腰に差してあるもう一振りの刀に目をやった
「あぁこれは、紫苑の斬魄刀です」
なぜお主がそれを?
そう言いたげな瞳に喜助は答えた
「紫苑、これで首を切ろうとしてたんス…」
「なっ……紫苑がっ」
「だから、ボクが預かってるんス」
それほどまでに思い詰めて…
「ボク、初めて紫苑のこと叩きました」
最低っスよね…
苦しく笑う喜助を肯定することも、否定することもできなかった
「その分抱き締めてやれ…」
…─
気がついたら、いつの間にか桜が散っていた…
琴乃と、今年は隊のお花見に行けるねって話しをしていたのに
今年こそは喜助さんと2人でお花見に行こうって、思ってたのに
どうして、いつの間に桜は散ってしまったんだろう
もう枝についている花びらは数える程だった