第36章 私にもっと、力があったら…
酷い雨、モニター越しでも耳を突く轟音、その中に…
「琴乃…っ」
虚と闘う琴乃の姿が映っとった…
なんやこれ…
虚に体を乗っ取られて紫苑を傷つけていた琴乃は、自分を殺して欲しいと、紫苑になら殺されてもいいと、そう願った
そして、俺に好きや言うとけばよかったと…
「俺、紫苑にひどいこと言うてしまったやんけ…」
「落ち着いたら謝ってきィ…誰も悪くないねん…誰も」
「…あァ」
…─
「……っ…………ぅ…………」
「紫苑?」
眠っていた紫苑がうなされている
額に汗をかき、次第に目からは涙がこぼれ始める
「……っ……琴乃……」
「紫苑!紫苑!」
その声に私はハッと目を覚ました
「ハァ……ハァ…………ハァ…………」
反射的に体を起こし、震える自分の両手を眺める
「紫苑……大丈夫?」
「この手で……琴乃を……っ」
目から大粒の涙が流れ、それが掌に落ちる
「紫苑、誰も悪くない…誰も悪くないんスよ…」
「喜助さん……私の斬魄刀は……」
嫌な予感が当たった…
「ボクが預かってます…」
「そう…」
もしかしたら、また紫苑は自分のことを…
「そのまま喜助さんが持ってて…」
「え?」
ボクにしがみつく紫苑の腕の力が強くなる
「じゃないと、きっと……また」
「分かりました」
コンコン─
「紫苑…」
ゆっくり開いた病室の入り口から弱々しい声が聞こえる
「平子サン…」
バツが悪そうにこちらに近づいてくる平子
「…………なさい」
震えた声はハッキリとは聞こえなかった
振り返ると瞳を震わせた紫苑がいた
「ごめんなさいっごめんなさいっ……!」
紫苑の頭に平子に言われた言葉がループする
「紫苑、スマン!謝らなアカンのは俺のほうや!お前ンこと一方的に責めて悪かった…」
「紫苑…」
「……ぃ…………なさぃ……」
ボクの袖を掴む手が、震えている