第36章 私にもっと、力があったら…
平子サンは別室の、琴乃サンに寄り添っている…
「確かに紫苑は琴乃に刀突き立てとったけど、紫苑が琴乃を殺すとは思えへんし、琴乃かて、紫苑を傷つけるなんて…」
「ボクだって、信じられませんよ…」
「まさか、虚の能力か…」
「私が教えてやらんでもないヨ」
2人が振り向いた先には、ニヤリと顔を歪ませたマユリがいた
「なんか知ってんのか…白玉」
その手には技術開発局で使っている、映像を記録する小さな虫のような機械、録霊蟲があった
「それは……まさか」
「私はネ、興味本意でこの虫たちを尸魂界の至るところにバラまいているんだがネ」
そこまで言って、ひよ里も漸くマユリの言ってる意味が分かった
「実に面白い映像が録れたヨ。見るかネ?」
3人は技術開発局に向かい、マユリのいう映像を確認した
「これは…」
そこには、琴乃が虚と闘う姿
紫苑が駆けつける姿
虚が入り込んだ琴乃の姿
琴乃が紫苑を傷つける姿
紫苑が琴乃に刀を突き立てる姿…
その一部始終がしっかりと記録されていた
「どうかネ?よく録れているだろう」
誇らしげに話したマユリは満足したように、その部屋を去っていった
「2人とも、辛かったやろな…」
「平子サンには、どうしましょう…」
「まだ、言わんほうがえぇと思う…」
今はまだ、受け止められる状況じゃなさそうだ…
「喜助はできるだけ紫苑についててやり。あの子相当クるやろ…こんなん…」
「ありがとっス…」
ひよ里は隊舎に移動し、喜助はまた四番隊の紫苑の元へ戻った
「喜助さん…」
「紫苑!良かった、気がついたんスね…でもまだ寝てないと…応急処置しか終わってないんスから」
部屋に入ると、丁度紫苑が目を覚ました
「ねぇ、琴乃はどこ?無事なんでしょ?」
心臓がヒヤリとした
「大分怪我してたし、私様子見てくるね」
立ち上がろうとした紫苑を咄嗟に押さえる
「喜助さん?」
「紫苑、琴乃サンは…………もう」