第36章 私にもっと、力があったら…
「琴乃!おい琴乃!!!」
平子が琴乃の体を揺らす
「なんでや……何寝とるんや……!起きろや……」
「琴乃サン…」
「琴乃…」
平子の腕の中で何度も揺さぶられる琴乃の体はもう熱をもたなくて、ピクリとも動かなかった
「また海行くんやろっ?明日も弁当作ってくれるんやろ?旅行でもどこでも行ったるから…!俺に…言うこと……あるやろ……っ」
平子の瞳から、涙が一粒零れた
「死んだら……アカンて……っ…ドアホ……」
そこに四番隊が到着する
「琴乃、琴乃を助けたってくれや!」
平子が卯ノ花に懇願する
「勇音は西園寺さんを」
「はい」
勇音は紫苑と喜助の元へと向かう
「虎徹サン…」
「これは、刀傷ですね…」
それが意味していること、それは…
「琴乃サンが紫苑を…?だけど…」
一体2人に何が…
卯ノ花は琴乃に近づき、全体の様子を見て手をかざす
そしてその手が止まり、卯ノ花は首を横に振った
「残念ですが…」
「嘘やろ…なァ!嘘って言ってくれや!」
「一度、四番隊に連れていきましょう…」
「なんでやっ…!なんで…!」
「真子…琴乃、運んだろ」
ひよ里が声をかける
「嘘やっ!琴乃が死ぬ訳ないやろ!」
「真子!しっかりせぇ!」
いつもハゲハゲ言うひよ里の呼ぶ名前が妙にしっくりくる
もう、俺の名前を呼ぶことのない琴乃の代わりに…
平子は歯をくいしばって、琴乃を四番隊に運んだ
同じくして紫苑も四番隊に運ばれた
「紫苑は大丈夫なんか?」
「…紫苑についていたのは刀傷です」
「なんやと…」
紫苑に刀傷つけられるのなんて、一人しか居らんやんけ…
やっぱりあの時一緒にボクも行くべきだった…
四番隊で、ボクとひよ里サンは紫苑の傍に居た
「喜助、一体何があったんや」
「…虚討伐を琴乃サンにお願いして、紫苑は胸騒ぎがすると言って後から琴乃サンを追いかけました。そのあとはひよ里サンも知ってる通りです」