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With me

第36章 私にもっと、力があったら…



私は琴乃に木に押し付けられていた

肩を強く掴んで、その目は琴乃に戻っていた


「紫苑!私を殺して!」

「な、に言って……?」


肩から震えが伝わってくる


「お願い…私が正気を保っているうちに、私を殺して!」

「で、できるわけないじゃない!!」

「じゃないと私、紫苑のことを……『邪魔ヲスルナァァ!!』」


琴乃は再び苦しみ、静かになった


「琴乃……?」


グサッ……


「っ……っあ!」


琴乃の刀が私の腹部を突き刺す


「邪魔ガ入ッタナ……」


どうすれば…

いくら考えても答えは出なかった…


攻撃をかわすのがやっとで、かわす度に傷口から血が吹き出る


「斬レルナラ斬ッテミルガイイ!」


誰か助けて…


助けて……喜助さん……


「コレデ終ワリダァ!!死ンデ儂ニ喰ワレロ!死神ィィ!!」


"お願い…………紫苑"


琴乃の声が頭に響いた

その時何を考えていたかなんて、全く覚えてなかった

ただ頭が真っ白で、ただ、動けなかった…

ただ、刀を持った手が動かなかった…






私にもっと力があったら…





「紫苑……」





ここに居たのが違う誰かだったら…





「ありがとう……」





もっと早く駆けつけていれば…




「…………ぃや……」










琴乃を失わずに済んだのかもしれない…























































「ぃやああああぁぁぁぁ!!!!」
















私の斬魄刀は、琴乃の胸を突き破っていた


私が咄嗟に刀を抜こうとした手を、琴乃が力ない手でおさえる


「これ、抜いたら……た、ぶん……喋れない……からさ」


私に覆い被さるように途切れ途切れで話す


「喋んなくていいよ…」


自分でも声が震えてるのが分かる


「最後が……紫苑で良かった……」

「琴乃……」

「紫苑になら、殺されて、も……いいってずっと……思ってたから……」


雨が手伝って、刀を伝って琴乃の血が私に流れてくる


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